使わない土地の負担が重荷に!権利を放棄できる?

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2021.01.03

一般的に不動産は「資産」と考えられており、特に経年劣化の無い土地は建物よりも重宝されることが多いです。

それでも、土地を所有することはランニングコストが発生する他、管理の不備から不利益を被るリスクもあります。

近年は相続などで不動産を承継するものの、利活用ができずに放置されるケースも目立っています。

本章では自分で使わない土地、使えない土地を保有することのリスクやデメリットを押さえ、一切の権利義務を放棄し自由になることができるかどうか見ていきます。

使わない・使えない土地の負担が重い!

例えば東京など都市部に働きに出て、家族を作り生活の地盤を築いている人が、故郷の実家を相続したとしましょう。

すでにライフサイクルは都市部で回っていますから、実家に帰っての生活は不可能です。

実家は戸建てと土地の両方がありますが、思い出もあることや費用の負担も考えると売却や取り壊しは躊躇してしまいます。

そこで、しばらくは現状のまま維持というのが相続でよくあるケースです。

自分で使えない不動産でも固定資産税などの税金はしっかり取られますし、定期的な管理、メンテナンスも必要ですのでこの費用がバカになりません。

土地だけであれば建物のような入念なメンテナンスは要りませんが、管理していることを示すため立て看板やロープを張るなどの対処をしておかないと不法投棄や不法占拠などの被害に合う危険があります。

また庭木などの手入れをしておかないと隣近所に迷惑が掛かり、倒木などで損害が発生すれば損害賠償の義務を負うのは所有者です。

普段目の届かない遠方にある土地ほど、移動費やメンテナンス費用など金銭面だけでなく心理的な負担も大きくなってしまいます。

所有権の放棄は法整備が追い付いていない

不要な土地の所有権を放棄することができれば、面倒な管理の負担や精神的な緊張から解放されます。

この点、困ったことに土地の所有権を放棄することは現状で認められておらず、法整備も追いついていません。

つまり一旦土地を所有してしまったら単純に権利を放棄する制度的なシステムが無いということで、これが今大変な問題になっています。

売却や何らかの利活用ができるのであればいいですが、山間部の土地など使い勝手が良くない土地ではそれも難しいことがあります。

結局、何にも使えない土地を強制的に保有させ続けられ、税金などの義務を死ぬまで課されるという何とも恐ろしいことになるケースも少なからず発生しています。

これはあまりに不合理であるということで、土地の所有権を放棄できるような制度を検討すべく、法務大臣の諮問機関である法制審議会が必要な作業を行っています。

ここ数年以内には国会に対し民法や不動産登記法の改正案の提出が行われる見込みですが、結論がどうなるのかは誰にも分かりません。

今現在不要な土地を所有している方は気が気でないと思いますが、現状では土地の放棄は不可能であることを踏まえたうえで、近い将来の法改正の動きにアンテナを立てておきましょう。

土地を手放すにはどうする?

山奥のよっぽど辺鄙な土地だと、売却などの利活用がどうしても難しいことは残念ながらあります。

しかし多くの土地は何とかすれば手放すことができることが多いので、所有権の放棄以外で権利義務から解放される手段をぜひ考えるべきです。

土地の権利を手放すには以下の方法があるので、注意点を加味しながら検討しましょう。

①売却する

最も合理的な手段は売却することでしょう。

自分で使わない土地でも、ほとんどの土地は値段次第では購入してくれる人はどこかにいるものです。

居住用の家屋を立てるための宅地を探している個人だけでなく、何らかのビジネスに使いたい人、開発して周辺の土地と共に施設などを作る計画があるデベロッパーなど、購入層は意外と幅が広いのです。

人口の少ない地域の場合は、そのエリアの需要に詳しい地元の不動産業者に強みがあることが多いですが、田舎になるほど買い手が見つかるまでには時間がかかることと、買い手が見つかった場合に不動産業者に支払う手数料の負担については承知しておかなければいけません。

また不動産譲渡所得税は売却した年の翌年の納税になるので、売却代金を納税資金に充てる場合は使い込んでしまわないように注意してください。

②贈与する

対価を支払うのは難しいけれど、タダであれば引き取っても良いという人がいるかもしれません。

贈与は対価が発生しないので簡単に考えてしまいがちですが、権利義務の変動をもたらすものですから贈与契約書は必ず作るようにしてください。

口頭契約でも契約自体は有効ですが、トラブルの種になるので必ず書面で契約書を作成しましょう。

③寄付する

贈与と似ていますが、寄付は特定の事業目的に賛同して、その活動に充てることを条件に財産を提供する行為です。

自治体やNPO法人、社団や財産などの公益法人は様々な事業を行っているので、その活動に使用してもらうために土地を寄付するという方法もあります。

ただ、寄付行為は意外とハードルが高いことも多いです。

本当に使い勝手が良い土地であれば喜んで寄付を受け付けてくれますが、その団体にとって使い勝手が良くないと、結局管理や税金などの負担が発生するだけなので、「あげる」と言っても「いや、要らない」と言われることも多いのです。

自治体は住民が支払う固定資産税の税収が減ることになりますから、明確に利用価値を認める土地でなければ引き取ってくれません。

④相続放棄する

その土地が将来お荷物になることが分かっていれば、相続のシーンで相続放棄をすることで土地の所有権者とならない選択もできます。

最初から所有者にならなければ一切の負担は生じません。

ただし、相続放棄は土地だけに絞ってできるものではありません。

被相続人の権利義務の一切を引き継がない選択になるので、現預金などプラスの財産も一切承継できなくなります。

一般的にはプラスの財産の方が多いケースがほとんどだと思いますので、不要な土地が付いてくることを承知の上で相続を認めるか、プラスの財産も含めて全ての権利を放棄するかの二択で悩むことになります。

空き家が建っている場合の注意点

土地だけであればまだ対処しやすいですが、空き家が建っている土地の場合は扱いに特別な注意を払わなければいけません。

まず金銭的なリスクですが、買い手を見つけやすくするためにと、ぼろ屋を解体してしまうと税金の負担が上がることがあります。

家屋が建っている土地は特別に固定資産税の負担を下げてもらえる特例の適用対象になっていることが多いです。

固定資産税は「固定資産税評価額×税率」で算出しますが、宅地には固定資産税評価額を下げる特例があります。

その土地の200㎡までの部分は固定資産税評価額が六分の一に減額され、200㎡を超える部分も三分の一にまで減額してもらえます。

結果固定資産税の負担が大きく減るわけですが、家屋を解体してしまうとこの特例の適用対象から外れてしまい、税負担が一気に増えてしまいます。

空き家がある場合、基本的にはそのまま売りに出して「空き家の解体については相談可」などにしておくのが無難です。

かといって、倒壊寸前のような危険性のある家屋をそのままにしておくのも高いリスクがあります。

倒壊や悪臭、害虫などの被害が周辺に及べば損害賠償の対象になるのが一つ。

そして近年の空き家問題増加により、国が整備した「空き家対策特別措置法」の問題もあります。

倒壊などの危険性があると認定された空き家は「特定空き家」として扱われることになり、行政からの指導等に対し必要な是正措置を行わないと、上述した固定資産税の特例の適用を外されてしまうこともあります。

最終的には、行政代執行により強制的に家屋の解体が行われ、その費用が所有者に請求されることになります。

老築化が進んだ家屋が建つ土地については、ケースバイケースで建物をどうするか検討が必要になります。

まとめ

本章では自分で使わない・使えない土地を所有することのリスクやデメリット、また所有権を放棄することができるかどうかなどについて見てきました。

利活用できなくても金銭的な負担が生じ、場合によっては管理不行き届きの責任が生じる可能性もあります。

所有権の放棄は現状で認められていないので、要らない土地であれば売却や贈与などの手段で手放すことを検討しましょう。

空き家が建つ土地の場合はケースバイケースで家屋の処遇を考える必要がありますが、倒壊などの危険がないようであれば、ひとまずは解体せずにそのまま売りに出せないか不動産業者に相談してみましょう。

※記事の掲載内容は執筆当時のものです。