積雪期の谷川岳で今シーズン最後の雪山を堪能してきた
谷川岳
谷川岳(たにがわだけ)は群馬・新潟の県境にある三国山脈の山である。日本百名山のひとつ。周囲の万太郎山・仙ノ倉山・茂倉岳などを総じて谷川連峰という。 (wiki)
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編集部です。
歯医者通いで山から遠ざかっていました。
今回はマイホームマウンテン、谷川岳です。
関東圏からはアクセスもよく、車なら水上ICから30分程度、電車でも水上駅からバスもしくは土合駅から徒歩でも行く事が可能です。
思いがけず早起きした休日の朝にふらりといく事があるくらいに近いです。
別名「魔の山」「人喰い山」「死の山」と散々な言われようですが、世界で一番死者を出している山としてギネス認定されている山。
ただ、死者が多いのはクライミングルートで、一般の登山者とは無縁の部分です。今日紹介する「天神平ルート」は比較的危険の少ないルートですが、油断は禁物。気を引き締めて行ってきました。
谷川岳登山当日
高崎駅 上越線 水上行き
【07:12発】
谷川岳は公共交通機関でのアクセスが非常に容易で行きやすいことも人気の一因です。
今回は高崎駅から上越線で水上駅、水上駅から最寄りの土合駅まで電車でのアプローチ。
水上駅から先の電車は本数も少ないので、水上駅からバスで谷川岳ロープウェイまで行くのが一般的ですが、初めて行く方には土合駅利用をオススメしています。
土合駅ホーム
鉄心が刺激されます
水上駅から約10分程度、2駅で土合駅です。
土合駅を利用するのは入山者と鉄道愛好家。ほぼ登山用の駅です。
土合駅は知る人ぞ知る秘境駅の一つで有名で、下りホームはトンネル内の地下にあり、「日本一のもぐら駅」として有名です。ホームから地上まで標高差約80m、改札まで10分〜15分かかります。もちろん、エスカレータは無く、462段の階段が待ち受けています。
ちなみに、手前の湯檜曽には湯檜曽ループという珍しいループ線がありますが、上り線のみです。そもそも勾配緩和のためのループですが、一般的に山の勾配にはスイッチばっk(ry
どーん
水上駅で乗り換えると登山者は皆、電車内で登山靴に履き替えたり、ゲイターを装着し始めます。そう、土合駅ホームから登山はもう始まるのです。
土合駅
【09:00】
今日は上越線が遅延したので、到着が30分ほど遅れました。
この改札が懐かしいと言っていると40代だとバレてしまう
昭和な感じの改札を抜けて駅の外に出ます。土合駅は無人駅で、SUICAなどの自動改札機もないので、注意が必要です。
土合駅から谷川岳ロープウェイまで20分程度、舗装道路を登っていきます。
途中に谷川岳霊園地があり、少しだけ拝んでからロープウェイを目指します。
谷川岳ロープウェイ
【09:30】
ちょっと時間も遅れ気味でしたので、登山届けを書く前にロープウェイのチケットを買います。登山者は往復2,100円。
バスや電車が来るタイミングではチケットカウンターには行列が出来てしまいますので、何をやるよりも先にチケット購入が良いです。
夏ならロープウェイの先のリフトまで利用できますが、冬期はリフトは乗れません。
天神平駅の気温は+4℃。既に土合駅の階段から30分ほど歩いているので、体は温まっています。ソフトシェルに着替えてロープウェイに乗り込みます。
頂上まで10分〜15分。(天候による)ロープウェイを降りたらアイゼンを装着します。
登山スタート
天狗の溜まり場の位置はちょっと曖昧
【10:00】
アイゼンを装着して、いざスタートです。
10時スタートはだいぶ後発なので、トレースはしっかりとついており、道に迷うことはなさそうです。
スキーヤーが楽しそうにゲレンデを滑っている横を登っていきます。
開始1分で急坂
最初から急登です。厳冬期以外はリフトを利用するので、この急坂は初めての体験です。
常々「登山の最初の30分は辛くて山に登る気が失せる」と言っているのに、最初の30分が物凄い急登。早速挫けそうです。
しかしながら、遠くに見える谷川岳にはほとんど雲がかかっていない!
晴天ではないものの、雲が殆どないコンディションは稀です。冬はまだいい天気の日が多いですが、夏は壊滅的です。
というのも、谷川岳は日本海側と太平洋側の気候がぶつかる分水嶺に当たる山で、非常に天候が不安定で目まぐるしく天気が変わります。普通の天気予報は使い物にならず、行ってみないとわからないほど予測がつきません。
高層天気図が読めるようになれば予測はできるようですが、高層天気図は僕には難しすぎました。。
雪崩
ピークを見ながらの登山はやる気が出ますね。
最初の坂を登りきってしまえば、しばらくはなだらかな道が続きます。
多少のアップダウンはありますが、最初の急坂を乗り越えた身としては苦になりません。この辺りはまだ樹木がありますが、眺めは良いです。遠くに武尊山や至仏山を見ながら歩きます。
左側の頭の白い山が至仏山、右の少し尖った山が武尊山。
太陽がだんだんと登り、気温が上がってきます。
遠くから断続的にゴゴゴゴというすごい音。
ひときわ大きな音が聞こえたと思ったら、目の前の山肌の雪が雪崩で落ちていきます。
よくよく山肌を見ると、至る所にクラックが発生していて、雪崩の兆候でまくりです。
そこからみるみるうちに雪崩れていきます。遠目に見た感じは「ちょっと大きめな雪玉が転がり落ちたなー」程度の印象なのですが、音がすごい。
地響きのような音が周囲に響き渡ります。
熊穴沢避難小屋
【10:50】
最初の大きな目印である熊穴沢避難小屋に到着です。
最初の30分こそ辛かったですが、それを乗り越えてからは順調に歩を進めていたので、ここでは立ち止まらずにそのまま進みます。
避難小屋まで来て初めて雪の深さを実感します。おおよそ2m程度でしょうか。雪が多いシーズンだと避難小屋が煙突を残してまるまる雪で埋まるようです。
稜線歩き。そして急登
避難小屋をすぎるとまた急登が待っています。ここからはずーっと登りです。この辺りから本格的に森林限界を超えて行くので、風が次第に強くなっていきます。
この辺りからハードシェルを羽織り、風に備えます。景色は更に開けて気持ちのいい稜線歩き…ですが、強風と急登で歩くので精一杯。途中「天狗のたまり場」でピッケルを装備します。
ここから最後の急登。コレを登りきれば肩の小屋です。
ここは天狗のたまり場の少し手前。
肩の小屋
【12:30】
肩の小屋と国境稜線
小屋まで到着すると多くの人が食事を摂ったりとゆっくりと過ごしています。
小屋から西側、万太郎山方面を望むと国境稜線が見えます。この稜線は群馬県と新潟県の県境で、ちょうど上の写真を撮っているあたりはおそらく県境を跨いでいるのではないかと思います。
注:肩の小屋にはトイレがありますが、冬期は使えないようです。トイレ側に回ると周りの雪がなにやら黄色くなっていました。
これって…
少しモヤモヤしながら、先を急ぐことに。
トマの耳
【12:50】
肩の小屋から約10分でトマの耳(1963m)です。谷川岳の双耳は間違って頂上認定されているようですが、とりあえずピークの一つに到達です。ゆっくりゆっくりと上ってきたので、片道約3時間かかりました。
トマの耳からオキの耳を見ると、大きくはないですが、雪庇が出ているのがわかります。そのすぐ脇を人が歩いていきます。
見てるだけで怖い。
ここでタイムアップ。13時になり、下山を開始します。
下山はツボ足地獄
腰までツボることもありました
以前、残雪期に登った時は、下りは登山道の横に残っている雪の上を山靴で滑って降りた事がありました。
その記憶があったので、今回も滑り降りようとしていましたが、そうはいきませんでした・・・
写真をみて分かる通り、登ってきたはいいものの、降りるのに少し勇気がいる斜度です。登ってくる人を避けるように降りていくと、一歩一歩が膝上まで埋まってしまい、思うように歩けません。
ズボズボ歩いていると、一際大きく沈んだと思ったら、腰まで雪に埋まってしまいました。
この降り方だと体力を消耗しますし、時間もかかります。
雪から這い出たときに斜面に座る形で休んでいたら、そのままズルズルと滑り落ちていきます。
「このまま滑っていけばいいんじゃないか」
と思った矢先、物凄いスピードで滑り始めます。
慌ててピッケルで滑落停止の姿勢をとります。この時ばかりは本当にヒヤリとしました。先日、谷川岳のバックカントリー で遭難した人のニュースが頭をよぎります。
大変でも歩いて降りようとするのですが、斜面と柔らかい雪に足を取られて転び→滑る→停止姿勢を繰り返します。おかげでだいぶ停止姿勢が上手になってきました。
いままで、正直、ピッケルは杖としては中途半端に短いし、公共交通機関での持ち運びは気を遣うしで、あまり有用性を感じていませんでしたが・・・本気で必要な装備だという事がわかりました。
そもそも杖代わりに突くモノではないですよね。。ついつい、下に突いて前のめりに何回も転びました。
下山完了
【14:00】
本格雪山にはちょっと装備が貧弱。買い替えたい…
下りは約1時間で完了。
スキーリフトの建物が見えてきて「やった!ゴールだ!」と思った矢先の登り返しに絶望を覚えましたが、なんとか下山完了。最初の急登が最後の試練でした。でもそこはスキーゲレンデの脇。一気に尻で滑りおりて下山完了です。
たまたま近くの武尊山に登っていた友人がいて、谷川まで車で迎えに来てもらえました。
電車で戻る場合、土合駅から水上方面の電車は極端に少ないので、時刻表を必ず確認してください。(帰りは地上のホームから出発なので、お間違えのないように…)
また、土合から電車に乗れたとしても、水上駅での乗り継ぎ時間が1時間ほどある場合があります。駅の中は何もないので、ロープウェイからはバスで水上駅にいく事をおすすめいたします。
谷川岳について
谷川岳は都心からも近く、日帰り登山にはちょどいい山です。
初心者から上級者まで楽しめる、懐の深い山で、見所はたくさんあります。
山に登らなくても一の倉沢へのハイキングコースなどは僕も好きで年に3回位は歩きます。
このハイキングコースを歩いていると、途中でいくつか金属のプレートがついていることがあり、マチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢と深く入るにつれて増えていくんです。
これらは全て、谷川岳で死んだ方々の慰霊プレートです。その数に驚くと同時に、自分も山で死なないように気をつけようと気が引き締まります。
谷川岳には人を惹きつける絶景やアクティビティ、岩壁などの魅力が沢山があります。
一の倉沢
登山メディアなどでは谷川岳は「雪山の初心者でも安心して登れる」とありますが、僕はそうは思いません。危険なポイントはいくつかありますし、途中は細い道を歩き、少しでも脇にずれると足を取られます。自分のレベルに合わせて、適切な装備で挑んでください。
現場からは以上です。
積雪期の谷川岳オススメ装備
ザック
ザックは日帰りなので、40L程度のものをオススメします。
足回り
靴は冬靴推奨です。もちろん、靴に合わせたアイゼンが必須です。
雪の状態にもよりますが、谷川岳は人気の山なので、登山道はしっかりとトレースがついており、歩きやすいですが、急登が多いので12爪推奨です。
アイゼンによってはお持ちの靴に装着できないものもあります。靴を先に選んでから靴に合うアイゼンを使いましょう。
ピッケルとストック
登りはストックがあったほうが登りやすいです。斜面がキツく感じてきたら、ピッケルに持ち替えましょう。
今回の機材
画角は20mm〜40mmを中心に撮りました。
ピーク付近の雪庇や海老の尻尾もありますので、中望遠やマクロもあるといいかもしれません。
また、雪山全般に言える事ですが、晴れた雪山は想像以上に照り返しがキツいです。ND4〜8を用意しておくといいと思います。
※記事の掲載内容は執筆当時のものです。