今すぐ登山に行きたくなる!山岳本おすすめ4選

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2017.01.20

Switzerland Europe

引用:pexels

山に魅せられ、山が大好きになると、次はどの山に登ろうか…と考えるだけでワクワクしますね。でも思い立ってすぐ山に行くことは難しいものです。そんな時は、山岳に関する書籍を読んでみてはいかがでしょうか。
空想の中でなら、何時でも何処でも登山を楽しめます。小説で読んだ憧れの山に実際に登ることができれば感慨もひとしおです。今回は、筆者おすすめの山岳本を4冊ご紹介しましょう。

短編小説集「アイガー北壁・気象遭難」新田次郎

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引用:写真AC
山岳関係の短編小説集です。短編ではありますが、新田次郎氏の登山シーンの記述は定評があり、まるでその場にいるような錯覚を味わえます。

アイガーとはスイスにある標高3970mの美しい山で、その北壁は1800mもある岩壁になっており、北壁ルートは登頂困難なことから多くの登山家が命を落としました。1936年にトニー・クルツがザイルにぶら下がったまま亡くなった事故は今でも語り継がれ、何度も映画化されています。日本人のアイガー北壁初登頂は1965年に高田光政さんが成し遂げましたが、この小説はその時に起こったことをもとに実名で書かれたものです。

高田・渡部の二人パーティで挑んだアイガー北壁。渡部が滑落し、高田は渡部の救助のため山頂経由で救助要請に向かいます。渡部は亡くなり、高田は生還しますが、渡部亡き後に残る死の謎。そしてそれらは、ふもとまで一緒だった芳野満彦さんの視点で書かれています。読んでいるこちらが芳野さんに感情移入し、息をつく暇もありません。

短編集に掲載されているうちの多くは悲劇的な内容ではありますが、新田次郎氏の丁寧な描写によって書き上げられ、山岳小説ファンにとっては読みごたえのある内容に仕上がっています。

自伝的小説「青春を山に賭けて」植村直己

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引用:写真AC
植村直己さんは冒険家として犬ぞりで北極点を目指したことで有名ですね。しかし、日本人初のエベレスト登頂者ということを知っている人は少ないかもしれません。また1970年当時、世界初五大陸最高峰登頂者でもある名だたる登山家の一人なのです。

この本は、植村さんが五大陸最高峰をすべて制覇していく過程の記録です。単なる登山記録では終わらず、準備の段階からの記録が事細かく描写され、読み手がクスッとなるエピソードが盛りだくさんです。これらのエピソードから、植村さんの優しい人柄が垣間見え、登山家・冒険家の植村直己より、個としての植村直己に惹かれることでしょう。

もちろん登山シーンも読み応えありです。彼は「生きて帰る」を信条に冒険に出かけましたが、厳冬期のマッキンリーで消息を絶ちました。彼は死の直前、何を思ったのでしょうか。

「トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか」羽根田治 他

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引用:ぱくたそ
まだ記憶に新しい北海道トムラウシ山での大量遭難事故。2009年7月、ツアー登山者15名とガイド3名、計18名のうちガイド1名を含む8名が死亡、「低体温症」という言葉を広く知らしめた事故でもありました。この本は6章からなり、各章で生存者の証言、当時の気象条件、低体温症の医学的考察、ツアー登山について、それぞれ詳細に分析・考察しています。

そもそもこの事故はなぜ起こったのか?「原因はこれだ」と1つに結論付けることはできず、いろいろな悪条件がすべて重なった最悪のパターンだったと言えますが、最大の要因は低体温症にかかったことだと言えるでしょう。低体温症にかかると判断能力が鈍り、運動能力も低下してきます。何より問題なのは、低体温症にかかった本人がその自覚がないこと、また事故当時は低体温症はあまり認知されておらず、対処法もわからなかっただろうということです。

当時はツアー登山についての是非も議論されました。「登山は自己責任」という言葉はよく耳にしますが、ツアー登山の場合は自己主張しづらいことでしょう。悪天候の中、出発を決めたガイドに何も言えなかった人もいたかもしれません。予定通り出発したかった人もいるかもしれません。考えさせられる一冊です。登山をされる方には一度は読んでいただきたい本です。

異色の山岳小説「クライマーズ・ハイ」横山秀夫

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引用:写真AC
「クライマーズ・ハイ」とは、登山者が極限の精神状態になった時、疲労や恐怖が麻痺した状態のことを指します。この本は実際にあった日本航空123便墜落事故を題材にして、主人公である新聞記者が谷川岳登攀に行く途中に事故の一報を受けたところから物語が始まります。

主人公の悠木は会社でも家庭でも愛されるべき人間とは言い難いのですが、彼の苦悩、仕事への情熱、そして「死」に対する麻痺、そういった内面の部分が登山の回想シーンと相まって素晴らしい小説に仕上がっています。登山をしない方でも興味深く読み進めることができるでしょう。

「降りるために登る」。これがこの本のテーマであり、悠木の人生のテーマでもあります。悠木は何を目的に登り、何処に降りたつのでしょうか?忙しい毎日に追われ、「クライマーズ・ハイ」状態の悠木は、全権デスクを更迭された後に何処へ向かうのでしょうか?

山を肌で感じることができる世界、山岳本。

人はなぜ山に登るのでしょうか? どうして山に魅入られるのでしょうか?
その答えは本の中にあるかもしれません。登場人物の思いに寄り添い、一緒に山へ旅立ってみませんか?
登山の際、ザックに一冊忍ばせて山小屋やテントで山岳本を読むのもいいですね。
山行が実り豊かなものになるに違いありません。

※記事の掲載内容は執筆当時のものです。