キャンプ女子Kajoが行く!〜初めての北アルプス③女王、薬師岳登山編〜

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2019.12.15

”北アルプスの女王”

誰しも聞いたことのあるその通り名を冠する「薬師岳」。
またの名を、北アルプスの貴婦人。

その響きからも伺えるように、その姿は見る人に荘厳な印象を与える山です。
富山平野から見ると、剣・立山・薬師岳が真正面に聳え、その中でも薬師岳は平野に伸び上がったように見え、まるで大きく感じられます。

百名山である薬師岳の、北アルプスの女王たる由来はどこにあるのでしょう?

 

前回無事にたどり着くことの出来た、北アルプス西域のベースと言える太郎平小屋から薬師岳までは、日帰り登山が可能。

ということで今回わたし、行ってまいりました。

荷物は、宿泊先である太郎平小屋にデポ(※荷物の一部または全てを、登山ルート途中に置いておくこと。体力的な負荷を軽減・安全性に繋げる事が可能)のお願いをして、いざゆかん!

 


天気は良好、気持ちよく稜線が見渡せる朝です。
ちなみにこの日は7月下旬、今朝も雷鳥は見れませんでした。

太郎平小屋から薬師岳までのコースタイムは往路が約2.5時間。休憩も含めてざっくり5時間ほどかなとゆるゆると計画。
普段であればすごくコースタイムを気にしますが、なんと言っても ①荷物はデポ②時間に余裕がある、むしろ時間しかない という状況だったので、このような登山スタイルになりました。

朝ももちろんのんびり出発。山小屋泊だとこういった余裕が生まれるのです、納得の連続です。

太郎平小屋を出発したのは、朝の9時過ぎ。(山での行動開始時間とは思えないでしょう?これができるのが、時間がありすぎる山小屋泊の醍醐味なのです!)


前日に散策で通った薬師峠のキャンプ場までは、朝の気持ちの良い空気のなか木道を歩き、テン場に着くと、その奥に登山道が現れます。


”日帰りで近隣の山をピストンするため”リュックの中に忍ばせておいたナップザックに、必要最低限のものを詰めて、こんなにラフな格好で行って来ました。(個人によって最低限、は異なります)


砂利石の転がる坂を越えると、整備された登山道。いよいよこれから登るのだ、とワクワクする瞬間、みなさんもありますよね?

初めて見る高山植物、風の匂い、雲の動き。
自然に逆らうことなく少しずつ溶け込んでいく最中、細胞がぞわっとするような、産毛が立つような、はたまた毛穴が開く瞬間が確かにあって、わたしはその肌感覚がとてつもなく好きです。


本当に気持ちが良い〜とふわふわ感じながら、それでも足元には十分に気をつけながら歩いて行くと、すぐにゴロゴロとした岩が現れはじめます。
これがまた、歩きづらい!
荷物がスーパー軽量なのでそこそこ気軽に登れましたが、縦走されている人も多いこの道、みんな何者なんだ、すごい。

想像しただけでタフさがわかる。

沢沿いに歩く道なので、水量で難易度も変わります。事前に降雨量や状況など確認した方がベターです。


何箇所かの軽い渡渉を経るも、その道沿いにはやはり私たち登山者を励ますかのようにその身を健気に揺らす植物たち。
写真はキヌガサソウ(別名ハナガサソウ)です、輪生する葉の真ん中に、透き通るほど白い花を咲かせます。


歩きはじめて30分ほどでしょうか、岩場にはまだ雪が・・・
標高3,000メートルには届かないにしても、夏のこの時期に雪を拝むとは、なんとも不思議な気持ちになります。

横目で雪を見ながら、時には雪の上を歩きながら(アイゼンが必要なほどではないことを事前に確認済み、時期によっては軽アイゼンやスパイク付きの靴が必要です)、どんどん先に進んで行きます。


ところどころにケルン(※登山道の道標になるよう、ピラミッド型に石が積まれたもの)があるので、わたしもコツンとひとつ、小石を積んで先に進みます。

雪があったことで景色に変化があり、この岩場の道も楽しむことができました。
はい、雪を見るだけでテンションが上がってしまう安上がりなタイプです。


初めて見た光景なんですが、雪の上に何やら模様が。風が吹いて模様を作るのか、それとも雨の影響なのか。
なになに、積雪面にできた波紋のような模様を「雪浪(ゆきなみ)」と呼ぶそうで。
雪に関しても季語がたくさんありますよね、昔から人々は、自然がもたらす「雪」に思いを馳せてきたのです。この時ばかりは、(危険をもたらさない範囲で)雪が残っていたことに感謝をしました。
だって雪のことを考えながら歩いていたらあっという間に岩場ゾーン、抜けていたので!

 


ゴロゴロと転がった岩場のエリアを抜けると、薬師平に抜けます。
先ほどとは景色がガラッと変わり、飽きることはありません。
薬師岳の東南稜を眺めながら、木道をゆっくり。途中のベンチではチョコレートをエネルギーとして補給します。(ギリギリ溶けてない!ラッキー!)

そこからまた岩場を少し通り(慣れてきちゃった)、足元に時折広がるチングルマの群落を眺め歩いて行くと・・・


あれ!これ、稜線上に出たんじゃない・・・?
この、目の前にある道をひたすら歩く感覚。
こんなに開けた、コンディションの良い稜線を歩くの、めちゃくちゃ気持ち良いです。


「不老長寿」の花言葉を持つハイマツは、薬師岳の斜面至るところに見られますが、ところどころに赤く小さな実をつけこれまた目を楽しませてくれます。
きっとこれからもどこかでハイマツを見るたびに、この山を思い出すだろうなと思いました。

 


そしてこの、青い空・残雪にチングルマの群落という構図の、完璧な感じ!(語彙力)
一斉にその顔を、太陽に向けているよう。


そして出ました、「国指定特別天然記念物・薬師岳の圏谷(けんこく)群」!
薬師岳の東面に残る、大規模な氷河地形のカール群です。
スプーンでアイスをすくったときのようなカール群を、山の中に3つも包括している薬師岳。
国内で天然記念物に登録されているのは、薬師岳の圏谷群と、立山連峰の雄山直下の山崎圏谷の2箇所だけ。

行かれた皆さんは納得いくまで、その景色をご堪能くださいね。


先ほどの石碑を過ぎてすぐ、見えてきたのは薬師岳山荘です。
標高は2,701メートル、山頂近くということでロケーションは抜群です。
ここで一旦休憩を取り、残りの工程を確認・だいぶ気温が下がってきたので服装の調節を行います。


次に向かうのは、薬師岳の手前にあるピーク。目の前にある道をひたすら進むのですが、緩い傾斜をくねくねと登っていきます。後ろを振り返れば、薬師岳山荘がもうあんなに小さく!

標高差200メートルをただひたすらに登っていきます。


こちらは、友人が「山頂と間違えた」と到着後引き返したという避難小屋跡です。
奥には、1963年発生の愛知大学生遭難事件の慰霊のケルンが建てられています。雪荒ぶこの場所で、稜線を間違えてしまった心痛む悲しい事故です。

両手を合わせて、北へ向かいます。

 目的地は、薬師岳山頂!
東側に広がるカールの美しいこと。
と、ここで気づくのです。霧、いつ出てきた。

わかってるんです、山の天気は変わりやすい。

こんな時のために持ってきていた、圧倒的信頼を寄せているTHE NORTH FACEのゴアテックスジャケットを取り出し、着込みます。


どんどん、霧が深くなっていく・・・なぜだ。先ほどまでは開けていた視界も、全然見えない。
両手が即座に出せる状態で、一歩一歩足元を確認しながら着実に歩を進めます。
(内心めちゃくちゃビビった)

山頂に着いてもガスってたらやだな。

さっきまでの、はしゃぎ気味だった私がどこかへ行ってしまいました。


そして、山頂到着!
見てください、何も景色が見れない様子を!

悲しいけれどもこれもまた山、と思い腰をおろしておにぎりを食べることに。
(ナップザックに防寒着・チョコレート・紙地図・おにぎり・救急セットまで入れてきたのです)
ご飯を食べることで、自分をご機嫌にしようと思います。

お尻の座りの良さそうな岩を見つけておにぎりを食べていると・・・。

いきなり視界、開けた〜〜〜〜!


え、めちゃくちゃ綺麗。そして、おにぎり美味しい。

おにぎりもメインだし景色もメイン、な一枚です。
山の天気に比例して私のテンションもみるみる回復。


おにぎりを頬張って、山頂で記念撮影までキメちゃいました。
めちゃくちゃサイコーー!!!
我ながらタイミング良いですね、撮れ高ありです。


来る時は絶望的な霧の中にいたため、見れなかった景色を見ながら下山します。
やったことはないけれども某RPGゲームのようだと思ったり、はたまた映画で観た光景を彷彿とさせたり。

山頂までは約2時間、休憩を30分ほど取りました。下山はなんだかあっという間で、1時間半ほどで太郎平小屋に到着。

体力に自信のある方は、折立登山口からピストンも可能です。
初心者の方や、不安の残る方は、今回の私のように太郎山小屋もしくは薬師岳山荘で一泊をしての日帰りピストンをお勧めします。


帰りの道も、○を辿れば安心、安心。

朝9時スタートをして、荷物を下ろしたのはお昼過ぎ。わずかな時間とも思えますが、この短時間で見た雄大な景色・経験した山の表情の変化、情報量が多すぎます。

美しく、時に残酷。

北アルプスの女王に”抱かれた”感覚とでも言うのでしょうか、圧倒的なパワーを目の当たりにした気がしました。
皆さんも是非一度、謁見してみてはいかがでしょうか?

 

写真・文章 Kajo

※記事の掲載内容は執筆当時のものです。

ABOUT ME
ライターの写真
Kajo
静岡県・伊豆出身。重度の放浪癖有り、海外経験は延べ25カ国に及ぶ。食中毒に4回当たるもめげぬ真性マゾの精神力と、「アルゼンチンは近い」と言い切るフットワークの軽さが売り。直感と好奇心をもとに、純粋に観察し大胆に発信をする。最近は岩場に住んでいる。