登山の事故、事前準備で大半が防げるという事実

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2017.02.03

引用:pexels

どんなスポーツにおいても事故は避けては通れませんが、登山の場合は山で事故に遭うと命の危険も生じます。毎年多くの登山事故が発生しますが、実は事前準備をしっかり行うことで、多くの事故を防ぐことができるという事実はあまり知られていません。事前準備をした上で登山に臨み、事故に遭うことなくピークを踏んで下山したいものですね。

登山事故の約半数は事前準備で防ぐことができる

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引用:ぱくたそ
2014年の警視庁の統計データによると、山岳遭難者の事故原因のベスト5は以下となっています。

1位 道迷い(1,163人、41.6%)
2位 滑落(501人、17.9%)
3位 転倒(401人、14.4%)
4位 病気(187人、6.7%)
5位 疲労(162人、5.8%)

この中で1位の道迷いが41.6%と、2位の滑落17.9%に比べ大きく差をつけて1位となっている点が、近年の大きな特徴となっています。

道迷いは、事前に登山計画を立案し、地図とコンパスで現在地を確認しながら慎重に行動すれば、まず発生しません。しかしながら、遭難事故で圧倒的な事故率トップとなっているのは、登山者の事前の準備不足の面が大きく影響していると言わざるを得ません。

また、5位の疲労についても、自らの体力を把握した上で無理のない登山を行えば防ぐことができるため、1位41.6%+5位5.8%=47.4%が事前の準備不足に起因する遭難事故ということができます。よって、事前の準備をしっかり行うことで、登山中の多くの事故を防ぐことが可能になります。

登山事故を防ぐための重要な事前準備(1)

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引用:写真AC
登山事故を防ぐには、意外にも事前準備が大切ということが分かったうえで、下記に登山事故を防ぐための3つの重要事項を記します。

(1)登山計画書を作成する
山で遭難して、捜索が難航する多くの場合、登山計画書が提出されていません。登山計画書は、イザという時の捜索の助けになるだけではなく、登山者にとっては登山計画書の作成を通じてルートや行動時間を把握することで、事前に登山シミュレーションができるという役割も存在しています。

登山計画書には登山ルートや登山者の連絡先はもちろん、保有する装備や食料も記載する必要があります。登山計画書の提出を行わずに登山を行う方も多いのが実情ですが、イザという時のため、また事前に無理ない計画かどうかシミュレーションするためにも、登山計画書の作成及び提出は必要不可欠と言えます。

登山事故を防ぐための重要な事前準備(2)

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引用:ぱくたそ
(2)予備日を設定する
社会人の登山の最大の難点は、日程に余裕がないという点です。土日もしくは決められた有給休暇の範囲内で登山を行う必要があります。しかしながら、山の天気は登山者の都合を考慮してはくれません。

アルプスクラスの山で宿泊を伴う登山を計画するのであれば、予備日の設定が必要不可欠となります。天気が荒れた場合は1日中山小屋などで待機ということは、標高の高い山では日常茶飯事です。それで日程がタイトな登山の場合、無理をして行動をして事故に遭うというのが遭難の王道パターンとなります。

特に宿泊を伴う登山は、観光旅行とは違い、天気などで急に行動できなくなることがあるので、必ず予備日を設定したうえで、余裕を持った計画を立案する必要があります。

登山事故を防ぐための重要な事前準備(3)

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引用:ぱくたそ
(3)自らのレベルの把握
登山を始めると、どうしても早く上級者コースに行きたいという気持ちが湧いてきます。この気持ち自体は健全なものですが、自らの体力や技術が伴わない場合、事故への道まっしぐらとなります。

よって、希望とは別に、自らの登山の体力や技術は常に意識したうえで、登山に臨む必要があります。アルプスに行きたいからといって、トレーニングもすることなしに、いきなり1日10時間近く歩くルート設定をするのは、無謀です。そして、アルプスには行動時間10時間クラスのルートが普通に存在しています。そのため、自らの登山の体力と技術を把握したうえで、行動可能な登山計画を立案する必要があります。

登山事故を防ぐ方法は、事前の準備をすることでその多くを防ぐことができるという事実は、多くの方が驚かれます。そして、やるべきことは、実は本来当たり前に行うべきことばかりです。予備日の設定は、社会人登山者にとっては耳の痛い話となりますが、宿泊を伴う縦走クラスの登山の場合は、予備日の設定は必要不可欠と言えます。

経験があるからと言って無理をしてはいけない

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引用:写真AC
ベテラン登山家が事故を起こすケースとしては、以前は平気だったからというものがあります。若い頃はこのルートは十分走破できた、以前は無理しても十分対応できたなど、現在の体力を把握することなく過去の経験をもとに登山計画を立案し、事故に遭うケースがベテラン登山者に見受けられます。

体力自体はトレーニングさえ行えば十分維持は可能ですが、トレーニングを行っていない場合、過去の経験に自らの体力が付いてこないケースは日常的に発生します。登山の経験は何よりも貴重なものですが、経験値と体力は別物と考えて、ベテラン登山家といえども自らの体力を踏まえた登山計画の立案を行う必要がありますので、ご注意ください。

まとめ~基本事項の繰り返しが登山事故を防ぐ

登山事故を防ぐためには、基本事項の徹底が必要不可欠です。既に述べたような事前準備は当然、登山前の準備運動、定期的な休憩及び給水、そして食事、これらを徹底することで多くの登山事故を防ぐことができます。

せっかく登山に行くのですから、事故に遭って嫌な気持ちで帰って来るのでは本末転倒となります。事前の準備及び基本事項の繰り返しで多くの事故を防ぐことができるため、小さな注意点もおろそかにすることなく準備を行ったうえで、登山を楽しみたいものですね。

※記事の掲載内容は執筆当時のものです。