山林を所有するだけでかかる固定資産税!どれくらいかかるかを解説
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最近は流行りのソロキャンプやアウトドアレジャーなどを目的に「山を買う」という人もいて、動画サイトやSNSなどでは芸能人の山遊びも話題になっています。
また両親が保有していた山林を相続で引き継ぎ、自分では使わない山林を持て余してしまうといったケースもあるでしょう。
利用目的があって購入する人も、使い道がないまま所有する人も、山林不動産の維持には「固定資産税」が必要だと知っておかなければなりません。
不動産は国や自治体から見ると税金を取りやすいため、取得・保有・売却の3つのシーンで各種税金をかけられるのがデメリットです。
本章では不動産を“保有”することに対してかけられる税金の一つ「固定資産税」を取り上げ、山林を所有する場合の税負担について解説します。
固定資産税ってどんな税金?
固定資産税は不動産を所有するだけでかかる税金で、地方税に分類されます。不動産は大きく「土地」と「建物」に分かれ、それぞれが課税対象です。
例えば土地を買ってその上にマイホームを建てれば、土地とマイホームの両方に固定資産税がかかります。
課税されるのは不動産を所有する人。基本的には不動産登記簿上で、所有権者となっている人が対象です。
売買や相続などで所有権者が変わることがありますが、納税義務を負うのは毎年1月1日時点で所有者となっている人です。
固定資産税の計算方法
一般的に固定資産税は、以下のような式で計算されます。
- 固定資産税評価額×税率=固定資産税
固定資産税評価額というのは対象不動産の価値のこと。しかし、これは市場価値とイコールではありません。
課税主体となる地元の自治体が、独自にその不動産の価値を算定し「固定資産税評価額」を算出します。
ちなみに固定資産税評価額は「課税標準」という言い方もされますが、同じ意味と捉えて問題ありません。
固定資産税評価額にかける税率は、原則として1.4%。これを標準税率といいます。
つまり基本的には以下のような式となります。
- 固定資産税評価額×税率(1.4%)=固定資産税
しかし宅地の場合は様々な特例があり、土地・建物の両方で負担軽減措置が実施されています。
一定の条件に当てはまれば、固定資産税評価額が減額評価されたり、税率が下がることで税負担が軽減されたりしますが、残念ながら山林は宅地ではないので適用がありません。
それでも山林は宅地よりも固定資産税の負担が小さいことがほとんどで、場合によっては課税されないこともあります。
次の項では山林に視点を絞って、固定資産税の負担を見ていきます。
山林の固定資産税はどれくらいかかるのか?
不動産の固定資産税評価額は自治体が算定します。そのため具体的な税額を知るためには、この評価額を確認しなくてはなりません。
調べ方はいくつかありますが、以下のような方法で確認できます。
- 毎年自治体から届く固定資産税の納税通知書
- 市区町村の役所窓口で固定資産課税台帳を閲覧
- 固市区町村の役所窓口で定資産評価証明書を発行
山林は広大なので「固定資産税も多くかけられるのでは?」と不安に思われるかもしれませんが、評価額は宅地に比べてかなり抑えらることがほとんどです。
とはいえ地目が山林となっている土地であっても、山奥にあるとは限らず、市街地に近い山林の場合もあります。
基本的には市街地に近い山林ほど評価額は上昇し、市街地から離れるほど評価額は下がる傾向にあります。
人が利用しやすい場所にあれば評価が上がり、逆ならば下がるということです。
注意すべき点として、地目の評価はあくまで現況で判断されるということ。
仮に不動産登記簿上の地目が「山林」であったとしても、建物を建ててしまうと「宅地」として評価されてしまうかもしれません。
自治体の判断によりますが、宅地として評価された場合、山林よりも評価が上がり固定資産税が高くなってしまいます。
固定資産税がかからない山林もある
山林の中には、固定資産税がかからないものもあります。2つのパターンがあるので、それぞれ紹介します。
①免税点に該当する場合
免税点とは固定資産税評価額が一定額に満たない不動産について、課税対象から外すルールのことです。
ほとんどの自治体では山林をはじめ土地については、固定資産税評価額が30万円未満であれば免税点となり課税されません。
ただし山林も含めて同一市区町村内に土地が複数ある場合は、それらの土地の固定資産税評価額を全て合計した額が30万円未満である場合に限ります。
そのため複数の土地を所有している場合は、合計額がいくらになるのか注意が必要です。
②保安林に該当する場合
山林が保安林に指定されている場合は、税金面でいくつかの優遇措置を受けられ、固定資産税については全額免除されます。
保安林とは災害防止や生活環境の保全などを目的に、国土交通大臣または都道府県知事によって指定される森林です。
山林は大雨が降った時に洪水が起きにくくする機能や、土砂の流出を防ぐ機能を持ちます。他にも風害や水害を予防する様々な機能があることから、山林は国土の維持に重要な役割を担っています。
保安林に指定されると上記のような機能を維持するために、立木の伐採や家屋をはじめ建物を建てる、土地の開墾や掘削などが制限され、自由な利用はできません。
その代わり固定資産税や不動産取得税は課税されず、相続税などでも一定の負担軽減措置が図られます。
自由利用の制限と引き換えに様々な優遇を受けられるため、自分で利活用をする予定がないケースでは保安林に指定された方がお得と考えられるでしょう。
山林の所有者は保安林に指定するよう申請できるので、メリットが大きければ一考の余地はあります。
固定資産税の評価替えについて
固定資産税の評価は原則として、三年に一度は行われます。
固定資産税の課税は対象不動産の価値(=固定資産税評価額)に税率をかけるので、評価額が大きいほど税負担が大きく、評価額が小さいほど負担は小さくなります。
しかし不動産の価値は一定ではなく変動するもの。そのため本来であれば毎年再評価を行うことで納税者の納得性を得られ、納税者間の公平を保てます。
とはいえ不動産の評価には手間と時間、費用がかかるため、行政のマンパワーや徴税コストを考えると毎年評価をやり直すのは現実的ではありません。
そこで固定資産税評価額は、三年に一回の再評価を行うこととされています。言い換えれば一度設定された評価額は、三年間据え置きです。
ただし大きな地価変動があった場合には、三年を待たずして再評価が行われることもあります。
このように固定資産の価値評価を見直すことを「評価替え」といいます。
山林も評価替えの対象になるので、原則として三年に一度は固定資産税評価額の見直しが行われます。
共有している山林の固定資産税はどうなる?
不動産は複数人で所有することもでき、これを「共有」といいます。
特に相続事案で共有となることが多く、被相続人が遺言書を残さなかった場合、不動産は必ず共有状態となります。
他にもアウトドアレジャーを目的に、山林を友人と共同購入したような場合も共有となりますが、この場合の固定資産税の負担はどうなるのでしょうか。
例えばA、B、Cの3人がそれぞれ持分を三分の一ずつとして共有している場合を想定します。
この場合は税額のそれぞれ三分の一ずつの納税義務を、一人一人負うのが公平のように思えます。
しかし地方税法の規定により、共有不動産の固定資産税はそれぞれの持分権者が連帯納付義務を負うとしています。
つまりABCの3人はそれぞれ他人の分も、連帯して納税しなければなりません。
実務上は代表者を決めることで納付書の送り先を一本化し、代表者が固定資産税を全額肩代わりして納めることになります。
肩代わりした代表者が他の共有者に対して求償権を持つため、Aが代表となり全額納付したとすれば、肩代わりした分はそれぞれBCに請求します。
売却した場合の固定資産税はどうなる?
自分で使えない山林を相続で承継した場合や、レジャー目的で購入したものの病気や転勤などの事情で利用できなくなった場合のように、山林を売却する場合の固定資産税はどうなるのでしょうか。
結論から述べると、日割り計算して売主・買主の双方が清算します。
冒頭で固定資産税は毎年1月1日時点で、所有者となっている者が納税義務を負うとお話ししました。
従って年の途中で売却した場合でも、売り主が納税義務を負うことになります。
しかし売却して他人の手に渡ったにも関わらず、納税を負担するのは不公平ですよね。
そこで売買が成立し物件を買い手に引き渡した後については、日割り計算をして清算するのが一般的です。
日割り計算による清算での注意点として、起算日をいつにするのかという問題があります。
これは地域によって慣習が異なり、また法律で決められているものでもありません。そのため取引当事者の間で取り決めておかなければならないものです。
- 関東では1月1日を起算日とし、1/1~物件引き渡し日までが売り手負担で、それ以降が買い手負担として清算することが多い
- 関西では4月1日を起算日とし、4/1~物件引き渡し日までが売り手負担で、それ以降を買い手負担として清算することが多い
混乱しやすいので起算日をいつにするかは、納税義務者が確定する「1月1日(賦課期日)」という数字とは別のこととして考えるようにしてください。
固定資産税の日割り精算については、売買取引を仲介する不動産業者にしっかり確認しましょう。
山林の売却は買い手がつかず時間がかかりやすい
使わない山林は売却すれば翌年以降の固定資産税を払わなくて済みます。
しかし一般的な土地と比べると山林は市場規模が小さく、購入希望者が多くないため売りにくい難しい不動産です。
市街地にある宅地は需要が多いので、特段の事情が無ければ半年から1年程度の期間をかければ買い手が付くのが普通です。
しかし山林の場合需要自体が少ないので、売りたくても売れないということも多くあります。最近は個人がレジャー目的で購入するケースもありますが、ごく一部です。
使用用途のない山林を抱えていると毎年固定資産税がかかり、例え少額であっても負担は強くなります。
山林の売却を考える場合、仲介をお願いする不動産業者は地元の業者にお願いするのがベターです。
あるいは自治体ごとに設立されている森林組合に相談してみるのも手です。林業資材の販売などがメインの業務ですが、組合によっては山林売買のサポートもしてくれます。
全国の森林組合はこちらで確認できます。もし売却を検討される場合は、参考にしてみてください。
山林の固定資産税情報 まとめ
山林を所有するためにかかる税金「固定資産税」は、所有しているだけでかかる税金です。自分で山林を利活用しない人にとっては負担が強い税金です。
一般的には宅地ほど負担は大きくありませんが、それでも毎年税金を徴収されるのは痛手でしょう。
とはいえ固定資産税はその土地の評価額によって異なります。そのため所有している山林がどれくらいの評価を受けているのか「固定資産税評価額」を調べて価値を把握しておきましょう。
また使わない山林であれば、売却して固定資産税の負担をなくすのも一つの手です。
しかし山林は需要が少なく買い手がつきにくいので、どうしても売却まで時間がかかり根気が必要となります。
※記事の掲載内容は執筆当時のものです。