登山の楽しみを広げる、一人用テントの選び方
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日帰り登山や小屋泊の経験をある程度積んで慣れてきたら、次はテント泊登山に挑戦してみたくなります。荷物は少々増えますが、稜線上の夕焼けや満点の星空、そしてご来光と、山の自然の美しさをよりいっそう深く味わえます。また、山小屋泊と比べてプライバシーも保ちやすく、何より費用がかかりません。今日は、テント泊に適した一人用テントの選び方をご紹介します。
選ぶポイント1:自立式と非自立式
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登山用のテントは、主に「自立式」と「非自立式」の2タイプに分かれます。
自立式とは、ポールを通すだけでテントの形になるタイプのテントです。ペグを打ったりロープを張ったりしなくても設営が可能です。ただし、安全のためにはペグを使ってきちんと地面に固定することが望ましいです。
細かく分類すると、前室だけはペグアウトが必要な「セミ自立式」と一切ペグアウトの必要がない「フル自立式」に分けられます。フル自立式のテントは実際にはあまり見られず、登山用テントの大半はセミ自立式となっています。
非自立式とは、テントを立てるために必ずペグを打つ必要があるタイプのテントです。ポールが自立式のテントと比べて少ないため軽量ですが、どんなシチュエーションでもうまくペグが打てる技量が必要なため、初心者にはややハードルが高いかもしれません。
初めてのテント泊登山にあたっては、自立式のテントがオススメです。
選ぶポイント2:ダブルウォールとシングルウォール
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登山用のテントを選ぶ次のポイントは、生地の枚数です。1枚の生地がフライシートとキャノピーを兼ねる「シングルウォール」と、フライシートとキャノピーが別になっている「ダブルウォール」です。
シングルウォールタイプは、生地もポールも少ない構造のため、全体的に軽量で、設営が簡単なのがメリットです。しかし、ダブルウォールタイプと比べて結露が発生しやすいというデメリットがあります。また、前室がないため悪天候の場合は雨・雪が吹き込みやすく、濡れた荷物などもテント内に入れざるを得ません。防水透湿素材を使っているものが多いですが、長年使っているとその機能も劣化していく、という面もあります。
ダブルウォールタイプは、重量や設営スピードという点ではシングルウォールに敵いませんが、居住性は圧倒的に勝ります。山で過ごす時間を快適に味わうことを重視するなら、断然ダブルウォールがオススメです。近年は素材や技術の進化によって、シングルウォールとの重量差もかなり少なくなってきています。
選ぶポイント3:重量は1500gを目安
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テント選びにあたって構造のほかにポイントとなるのが、重量です。宿泊を伴う登山では、日帰り登山と比べて食料などどうしても荷物が増えます。クルマで全ての荷物を運べるオートキャンプ等の場合と異なり、登山の場合は全ての荷物を自分で背負って運ぶことになるので、テントの重量も可能な限り抑えたいものです。
重量だけを考えるのであればシングルウォールという選択になりますが、居住性とのバランスを考えるとダブルウォールタイプで1500g程度が一人用の登山テントを選ぶひとつの目安になりそうです。
3つのポイントを抑えたおすすめテント3選
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自立式(セミ自立式)・ダブルウォール・重量1500g程度という3つのポイントを抑えた、一人用の登山テントのおすすめを3つご紹介します。
1つめは、国産テントの老舗であるアライテントのトレックライズ0です。ツーリングやトレッキングでの使い勝手を追求したシリーズで、ベンチレーターが大きく暑い夏でも快適な3シーズンテントです。フレームスリーブに切れ目がなく、スピーディーにポールを通すことができます。究極の一人用テントと言われ、本体・フライシート・フレームの合計重量は1250gとなっています。
サイズ:1人用
ブランド:アライテント(ARAITENT)
2つめは、こちらも国内ブランドであるモンベルの定番モデル、ステラリッジテント1型です。独自のオートセットアップ・スリーブエンドによって設営がしやすく、別売のスノーフライ等を組み合わせればオールシーズン対応可能です。本体重量は1260g、ペグ・張り網・スタッフバッグを含む総重量は1440gです。
サイズ:1人用
ブランド:mont-bell(モンベル)
3つめは、MSRのハバNXです。MSRはアメリカのブランドで、ハバNXは一体型ポールによる設営のしやすさが魅力のモデルです。サイドウォールがまっすぐ立つ構造で、居住性が良いのも特徴です。フライ・本体・ポールの重量は1120g、総重量は1290gです。
他にこんなテントも。特色ある一人用テント
引用:doppelganger-sports.jp
上記で紹介した使いやすい一人用テントとは対照的な、個性あるテントもいくつかご紹介します。万人向けとは言えない面もありますが、目的にハマれば非常に魅力的なテントです。
1つめは、ドッペルギャンガーのワンタッチソロテントです。こちらのソロテントは、傘を開くのと同じくらい簡単に設営できると言われています。大人がちょうど横になれるサイズでとてもコンパクト。寝転がったままスマホが見られるスマートフォンホルダーが付いているというのもおもしろいですね。本体重量は1200gです。
ブランド:DOPPELGANGER(ドッペルギャンガー)
2つめは、ニーモのゴーゴーエリートです。重量はiPadと同等、収納時は1Lペットボトルに収まるサイズと非常に軽量・コンパクトです。専用ポンプでポールを空気で膨らませる仕組みの「エアビーム」システムが特徴です。重量は652gです。
3つめは、アライテントのスーパーライトツェルト1です。一般にイメージするテントといえばこんな形状かもしれませんが、ツェルトは厳密にはテントとは区別されます。やむを得ず緊急避難的に野宿する「ビバーク」の際に使用する緊急用テントです。予め宿泊するつもりの登山というよりも、日帰り登山の際に念のため持っておくもの、といった位置づけになります。重量はわずか280gです。
一人用テントでより豊かな登山体験を
山でのテント泊で夕焼けや星空を満喫するのももちろん忘れられない体験になりますが、あいにくの天候でテントに打ちつける雨音を聞きながら眠るというのもまた、日常生活では経験できない素晴らしい自然体験のひとつです。もし興味がわきましたら、今シーズンはぜひ一人用テントを持っての登山に挑戦してみてください!
※記事の掲載内容は執筆当時のものです。