日本三大霊山ー恐山、比叡山、高野山…登山を山岳信仰から楽しむ
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引用:ぱくたそ
夏本番の暑い時期の楽しみの一つに、背筋がスーッと寒くなる怪談や、肝試しがありますね。キャンプ場や登山で仲間同士、色々な企画をされる方も多くいらっしゃいます。
肝試しもレクリエーションとしては楽しい企画ですが、場所や地域によっては多大な迷惑を掛けてしまう場合があり、無暗に肝試しは行わないことをおすすめします。今回は、日中に訪れても肝試しになりそうな霊山と呼ばれる山々をご紹介します。
古くから伝わる山岳信仰から多くの霊山が存在
引用:ぱくたそ
日本では、古くから山岳信仰が脈々と受け継がれており、現在も霊山・霊場と言われる山々が、数多く存在します。八百万の神々や妖怪などを自然現象と結び付けることで神格化し、その信仰の対象としているのは海外では珍しく、日本特有の文化とも言えます。その山岳信仰の結果、日本三大霊山と言われる山々が語り継がれています。
こういった海外に誇れる山岳信仰文化を知ってしまうと、夏の風物詩でもある、山中での肝試しが気持ち的にし難くなりますが、実際、山中での肝試しは夜間に行われることが殆どです。登山装備などが無い状態で山道を歩くと、怪我や、最悪遭難をする可能性もあり、非常に危険なレクレーションということを自覚しておくことが必要です。
次項では、山にまつわる山岳信仰や歴史的背景などから、日本三大霊山と言われる説についてご紹介していきます。
日本三大霊山(霊場)には大きく2つの説がある
引用:ぱくたそ
日本独自の山岳信仰から、日本三大霊山と言われる山々は諸説あります。広義な定義としては2つの説があり、山名を聞くとどちらの説も有名な山々が名を連ねています。
一つ目は富士山、白山(石川県、岐阜県)、立山(富山県)の3座が日本三大霊山と言われる説で、順に浅間信仰、白山信仰、立山信仰と、どれも山自体がご神体として崇められており、五穀豊穣を祈る山岳信仰の対象として昔から知られている山々ばかりです。この他に長野県の御嶽山を含むという説もあります。
二つ目は恐山(青森県)、比叡山(滋賀県、京都府)、高野山(和歌山県)が日本三大霊山と言われる説です。こちらの三霊山(霊場)は、山岳信仰的にも歴史的にも調べてみると面白い経緯があり、特に比叡山と高野山は学校での歴史の授業で必ず履修する山や地域で、こちらも「なるほど」と思える理由があります。
次項からは、筆者が個人的にも肝試し的にも面白いと感じた二つ目の説である恐山、比叡山、高野山について個別にご紹介して行きます。特に歴史的な背景を読み解くと、肝試しに近い感覚になるのではないでしょうか。
青森県下北半島にある霊場でもある恐山
引用:Instagram by demekin999
青森県の下北半島にあり、外輪山を形成している山々の総称が恐山で、最高峰は釜臥山(かまふせやま)で標高879mです。恐山は別名、宇曽利(うそり)山とも呼ばれ、平安時代に天台宗の円仁によって開山されたとの伝承が残っています。また恐山は活火山で、硫黄分の多い土壌とあちこちから噴き出す火山性ガスなど、通常の山とは景観が異なることから、周辺地域の住人は、死者の魂が集まる場所と考えられ、その信仰は今でも引き継がれています。
戦後から行われるようになった、死者の言葉を伝えてくれるイタコによる口寄せも、恐山=イタコとして知られるようになりました。
宇曽利湖(うそりこ)や霊場周辺には、血の池地獄や修羅王地獄など、死者を弔う石積と風車が、違う世界があるのではないかと不思議な感覚になると思います。
【恐山観光案内】
http://www.pref.aomori.lg.jp/bunka/kanko/sh_renkei_gururin_osore.html
滋賀県と京都府にまたがる比叡山
引用:visualhunt
滋賀県と京都府にまたがって鎮座する比叡山も、日本三大霊山と言われる1座で、双耳峰の峰で標高は848.3mあります。また天台宗の総本山である延暦寺があることでも有名な山で、織田信長による「比叡山の焼き討ち」を歴史の教科書で習った方も多いのではないでしょうか。この織田信長の焼き討ちでは僧侶をはじめ、女子供も合わせて1,500人もの犠牲が出たとも言われています。
比叡山は、天台宗の総本山であり平安時代に開山されてから、現在まで山岳信仰の山として厳しい修行が受け継がれているのも特徴で、「日本仏教の母山」とも言われているほどの霊山です。
また比叡山は、1994年に延暦寺がユネスコの世界文化遺産に登録されたこともあり、多くの参拝者と登山者が訪れる人気の山となっています。比叡山へのアクセスは、ケーブルカーや比叡山ドライブウェイなどを経由し自家用車で出掛けられますので、是非足を運んでみては如何でしょうか。
【比叡山延暦寺 ウェブサイト】
和歌山県に位置する日本仏教の聖地のひとつ 高野山
引用:visualhunt
和歌山県北部にある高野山は、平安時代に嵯峨天皇からの命により、弘法大師(空海)によって開山された真言宗の総本山でもあります。実際に高野山という山はなく、今来峰や宝珠峰など8つの峰に囲まれた盆地のことを指しています。
この高野山も、先にご紹介した比叡山延暦寺と同様に、織田信長と対立し軍事的な圧力「高野攻め」を受けています。織田信長と高野山との間に大きな戦闘等があったかは諸説ありますが、最終的には豊臣秀吉とも対立し、この時には大規模な戦闘が行われ、多大な犠牲を出したため高野山は壊滅の危機に瀕したともいわれています。
平安時代から現在に至るまで、さまざまな歴史を潜り抜けて来た高野山は2004年にユネスコの世界遺産に登録されており、昔も今も変わらず、日本仏教の聖地のひとつとして人々から厚い信仰を受けています。
【高野山真言宗 総本山金剛峯寺 ウェブサイト】
http://www.koyasan.or.jp/
山々の背景を理解し日中に訪れてみては?
山岳信仰は日本独自の文化ともいえる物ですが、その歴史的背景や信仰を理解して山々を訪れると、日中でも肝試しのようにスーッと、背筋に冷たい物を感じるのではないでしょうか。
先にも書きましたが、夜間の山中での肝試しは安全の面でも危険なレクレーションになりますので、ご紹介した日本三大霊山を訪れてみて、一味違う肝試し登山を楽しんでみても良いかも知れません。
※記事の掲載内容は執筆当時のものです。