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「登山にコンパス」と聞けば、緊急時に備えるアイテムのイメージが強いのですが、単にコンパスを持っていくだけでは、いざという時に役に立ちません。まずは、緊急時ではなくいつもの登山で楽しくコンパスを使ってみませんか?
ここでは、まずはコンパスに慣れること、コンパスがあるとどういったことができるのか、おすすめのコンパスなどをお伝えします。
そもそも登山にコンパスは必要か?
引用:写真AC
正しい使い方を知らないまま携行し、道に迷ってからコンパスを出してもあまり役に立ちません。ぼんやりと方角がわかるのみです。コンパスは使いこなせてこそ持っていくと安心なアイテムと言えます。
なぜコンパスを持っていくのか? それは地図を読むためです。コンパスのみを持っていっても、それだけでは不十分で、地形図と、可能であれば高度計も持参しましょう。より正確に地図読みができるようになります。
地図読みの目的は大きく分けて3つあります。1つ目は現在地を把握すること。2つ目は進むべき道はどちらなのか判断すること。最後は地図に書かれてある山は実際どの山なのか把握することです。
コンパスの針が指す北は本当の北じゃない?
引用:写真AC
意外と知らない人が多いのですが、コンパスの針が差す北と、地図に書かれている北は同じ方向ではありません。地図の北の方向に進むと北極点にたどり着けますが、コンパスの針が差す北の方向に進むと北極点にたどり着けないのです。これはどういうことでしょうか?
コンパスの針が差す北を磁北(じほく)といい、地表の磁場の影響で地図上の北を指しません。現在、磁北はカナダ方面になっています。地図上の北を真北(しんぼく)といいます。磁北と真北のずれのことを偏角といい、磁北は年々少しずつ動いているため、国土地理院のサイトでは5年ごとに偏角の磁気図が更新されています。
磁北と真北の指す方角が違うことを知っておかないと、登山での地図読みは難しく、行きたい方向にたどり着けなくなってしまいます。
道に迷う前に現在地を把握しよう!
引用:写真AC
コンパスと地形図で現在地が把握できます。不安な方は高度計があるとよいですが、高度計は気圧で測定するので、正確な高度がわからないこともあります。そのため、高度計は確認程度にしましょう。また、歩数計があるとより安心になります。
地図は一般の地図ではなく、地形図や山岳地図といった、等高線が入っているものにしましょう。ルートやコースタイムなどは事前に自分で地図に書いてしまえば問題ないので、何も書かれてない地図で構いません。1:25000の地図が一番手に入りやすいと思います。
また、自分の歩幅と速度を事前に知っておきましょう。これで、登山口から自分がどれくらいの時間歩いたか、歩数はどれくらいかで歩いた距離がわかり、地図上でどのあたりにいるかわかるようになります。迷ってからでは現在地の把握は難しいので、必ず迷う前に確認します。また、目印となる岩や、尾根や、急斜面などは、記憶しながら進みます。
山座同定で楽しい登山。あの山の名前は?
引用:写真AC
山座同定とは、今見えている山の名前を地図などで特定することを指します。展望台に上ったとき、双眼鏡の横に山の絵と山の名前が書いてある絵がありませんか? それと同じことを読図ですることです。遭難時に進行方向を判断するために使われますが、遭難時ではなく、登山中の休憩時や、頂上に着いてから見える山がわかると、登山も楽しくなります。
山座同定自体は、読図の基礎がわかればできることもあります。すなわち、目で見た山の形(輪郭、山頂の位置、急斜面の位置など)とだいたいの距離を確認し、それに近い方角と等高線を持った地図上の山を見比べてみると、わかりやすい山なら判断可能なこともあります。山の名前がわかると登山の楽しみも増えます。山座同定のやり方はぜひ覚えてください。
おすすめの登山用コンパスはコレだ!
引用:写真AC
100円ショップで売っているものから1万円近いものまでありますが、高価なものは必要でしょうか? 方角さえわかればどれも一緒のような気がしますが、実は用途に応じて細かく機能が異なりますので、きちんと登山用のものを買った方がいいのです。
筆者おすすめの登山用コンパスは、SILVA(シルバ)社製「シルバ NO.3」というコンパスです。一番メジャーなコンパスで、これを買っておけば間違いありません。おすすめポイントは、磁針に沿った黒い線です。地図上の進みたい方向が定まりやすく、ベゼルも非常に回しやすいです。針の回りも速く、気泡の発生も他のコンパスに比べて少ない気がします。
次におすすめのコンパスは、SUUNTO(スント)社製「A-10NH」です。こちらはエントリモデルで価格も安いのですが、通常の登山で困ることはありません。スント社はクライミングウォッチも発売しており、筆者の高度計もスント製です。
本当にコンパスが必要になる前に
登山に慣れているとはいえ、バリエーションルートや、登山道がないルートにチャレンジするときは、コンパスは必要です。道に迷った時や、スマートフォンの電源が切れてGPS機能が使えなくなった時などの最後の頼みの綱になるものですが、コンパスに頼らないといけないようなルートは、いきなり行くべきではありません。むしろ心にゆとりがある一般ルートでの登山時に携行し、慣れておくべきです。
山座同定、ぜひチャレンジしてみてください。登山がもっと楽しくなるはずです。