今回の山行は全日程テント泊で、百名山の「鷲羽岳」「水晶岳」「薬師岳」を登り、雲ノ平で癒される計画。
でしたが後半天気に恵まれず、贅沢にも2泊も小屋に泊まってしまいました。
小屋に泊まるのは、毎年夏のシーズン終わりに、1泊だけご褒美にと決めていた私。まぁ、たまにはこんな時があってもいいでしょう(笑)
【日程】2019年8月26日~29日
- 1日目:新穂高ロープウェイ→わさび平小屋→鏡平山荘→双六小屋→三俣山荘
- 2日目:三俣山荘→鷲羽岳→水晶岳→岩苔乗超→祖父岳→雲ノ平山荘→薬師沢小屋
- 3日目:薬師沢小屋→太郎小屋
- 4日目:太郎小屋→折立
1日目
夜、東京発の登山バスに乗り込み、夜明けころ新穂高に到着。
バス降車場所から少し坂を下ると「新穂高センター」(奥飛騨温泉観光案内所)があり、トイレや登山届を提出します。
山に登る前のこの時間は、楽しみもあり不安もありでいつも緊張します…歩き始めたらすぐ忘れるんですけどね。
いよいよ3泊4日のハイキングの始まりです!
「新穂高センター」(奥飛騨温泉観光案内所)
今日の宿泊地「三俣山荘」までは、山と高原地図のルート時間で約9.5時間。わさび平小屋辺りまでは舗装された道路を歩きます。
わさび平小屋手前にある、笠ヶ岳に向かう最短ルート「笠新道登山口」
このルートは途中トイレがないので、わさび平小屋でトイレを済ませてから登り始める方が多かったです。
わさび平小屋
この道を通る山行の時は、トイレきれい、ベンチある、蛇口があって給水しやすい「わさび平小屋」でいつも給水して行きます。
小池新道入口からは、木道と少し急な岩場が続きます。展望もあまりないので、もくもくと歩く。
山荘まであと500m!こういうのがあると頑張れます。
鏡平山荘
テラスも売店も大賑わいです。ここからは展望が開けて、槍ヶ岳や周辺の山々を眺めながらのハイキングとなります。
小屋の周辺にはさまざまな形の池があり、「池に鏡のように映る、槍ヶ岳や穂高が美しい」から、鏡平小屋はここに建てられたそうです。
振り返って鏡平池。
整備された道を、穂高連峰など眺めながら気持ちよく歩きます。
小1時間ほどで弓折分岐に到着。広めの広場で座りやすい岩が沢山あり、眺めも最高なので休憩におすすめです。
弓折分岐からの槍ヶ岳や穂高連峰の峰々
「先々週は北鎌尾根(槍山頂から左に伸びている岩稜帯)行ってたんだよな~、こっち側の景色見ながら頑張ったんだよなぁ」と思いにふける。
北鎌尾根の記事はこちらからどうぞ。
弓折分岐から鏡平を見ると、山の上が平らで面白い形してますね。
弓折分岐から小1時間で「雪田花見平」
ベンチは写真中央にあるのみ。風が通り抜けて寒いので先に進みます。
奥の方に双六山荘が見えました!
途中、山荘のスタッフの方が、山道整備をしてくれていました。こんな山奥でも不便なく歩きやすいのは、こういった方達のご尽力のおかげ。
双六小屋到着。
小屋の目の前に60張設営できるテント場があり、平らで設営しやすそうです。写真は双六小屋から槍ヶ岳へと続く「西鎌尾根」
今回、始めに立てていた山行計画は、
- 1日目→双六小屋泊
- 2日目→雲ノ平キャンプ場泊
の予定でしたが、明日以降の天気が気になり先に進んでおきたかったのと、まだ時間と元気もあったので三俣山荘まで行くことにしました。
双六小屋から三俣山荘までは、
- 「巻道ルート」
- 「中道ルート(途中から稜線ルートに合流する)」
- 「稜線ルート」
の3つがあり、ガスってきたので時短の巻道ルートを選択。
三俣峠で稜線ルートと合流します。
ここから三俣山荘まで下るだけ。もう少し!
山荘手前の草がない所がテント場「三俣蓮華岳キャンプ場」。小屋の向こうにそびえるは鷲羽岳。
三俣蓮華岳キャンプ場は、平らでテントが設営しやすく、水場も近くにあります。
トイレが外にはなく、山荘のきれいなトイレを使える嬉しいシステム。テントの設営場所によっては、小屋まで少し歩きますが、平坦で歩きやすい道なので苦ではないと思います。
三俣山荘
2階の食堂は、夕食後からテント利用者も自由に使っていいみたいです。
気になるけど1人では入れないビビりな私…
暗くなってからテントの外に出たくないので、明るいうちに夕食とトイレを済ませ、19時には就寝しました。
ちなみに…この三俣山荘と明日行く、雲ノ平山荘、水晶小屋を建設した初代小屋主は、黒部の開拓者、そして「黒部の山賊」の著者でもある
“伊藤正一さん”
気分高めるために読んできました!
今の小屋主さんは息子さんだから…売店で受付してくれた少年はお孫さんかな?家の手伝いしていて偉いわぁ。
ハトがお出迎え
2日目
まずは鷲羽岳へ!
1時間ほどで山頂到着。広めの山頂からは360°景色が楽しめます。
山頂直下にある火山湖「鷲羽池」には、池まで下りるのが面倒になり行かず。きれいだったから、行けばよかったー。(写真なくてすみません…)
ワリモ北分岐でザックをデポり、水晶岳へ。
見ただけでわかる。絶対気持ちがよさそうな稜線なんだから。
↓本当に気持ちがよかったです。
本当に水晶ありますよ。水晶岳に。
水晶小屋。きれいなバイオトイレあります!
ここから水晶岳まで約30分。
到着ー。
山頂の手前は少し急な岩場になっているので、落石など気を付けて…
ここからも360°ビュー。
水晶岳の山頂は狭いため、山頂で一緒になった方に写真を撮ってもらい、少しお話して小屋まで戻りました。
その方は、これから高天原まで温泉に入りに行くそうです。秘境の温泉いいなー
次回は高天原経由で薬師方面に行くのもよいかも。
水晶小屋の上には、安全祈願のお地蔵様が見守ってくれています。
小屋の目の前は野口五郎岳~
水晶小屋名物「力汁」 お餅と少し濃いめの味付けがうれしい。
だーれも来ず、貸切状態。あまりにも気持ちがよくて、1時間以上まったりしてました。なんて贅沢な時間なんでしょうか。これぞ平日登山の醍醐味!
北アルプスは魅力的なルートがたくさんあり過ぎて、山を眺めながら次の山行計画を考えている時間は幸せな時です。
ワリモ北分岐を少し下ると「岩苔乗越」
水晶岳でかなり満足してしまい、デポっていたザックを背負うと重さを受け入れられず。
まだ歩くのにさっきより重く感じる…
気合入れて雲ノ平へGOだ!
30分ほどでケルン群のある、祖父岳山頂。
ここを超えると雲ノ平が見えてきます。
雲ノ平へと続く下りの岩場。ここでコケて足首ひねりました。
コケるとちょっとやる気を失うのは、私だけでしょうか。
不安定な石が多いので(特にお疲れの時は)足元にお気を付けてくださいね。
左奥の赤い屋根が雲ノ平山荘。手前の広場が雲ノ平キャンプ場。
ここで、今日どこに泊まるかすごく悩みました。予定では雲ノ平キャンプ場泊。
だけど受付の小屋までの往復30分がツライ…
今テント場に誰もいない、私1人の可能性があって寂しい…
雲行きが怪しく、雲ノ平でお散歩や素敵な夕日やら朝日やら星空は期待できそうにない…
……進むか。
薬師沢小屋にはテント場がないので、小屋泊しちゃうか!
自分に甘くなる神降臨。雲ノ平はまたリベンジしよう。
雲ノ平は「スイス庭園」「日本庭園」「アルプス庭園」などたくさん名の付く庭園があります。
今回は高山植物を楽しめる時期は過ぎていて、紅葉はもう少し先。ちょっと微妙な時期だったようです。
けど天気が良かったら、また違った感想だったと思います。
木道は少し古いようで、一部板に足を置くとシーソーのように反対側が浮くところや、片足を乗せると板がぐらつく場所があり、何度か池塘(ちとう)に落ちそうになる、なかなかスリリングな木道歩きを味わえました。
一見新しい板に見えても、ぐらついたので要注意です。
雲ノ平山荘
山荘の「石狩鍋」いつか食べたいな。
アラスカ庭園を少し歩くと木道が終わります。道が狭くなるので、大人数のすれ違いは大変かもしれません。
木道が終わると、あとは大きな岩々急坂を約500m、ひたすら下ると1.5時間ほどで小屋です。
両手を使う場所なので、3点支持で安全に…この急坂は結構しんどかったです。
丸っこい岩々だから滑りやすく、雨の日は歩きたくないですねー
岩場が終わった頃、水晶岳ぶりの人に出会えました!
大学生3人パーティで、これから雲ノ平でテント泊するそうです。もうすぐ夕方だけどこれから登るのか。大学生パワー恐るべし。
赤い橋まで来れば目の前に小屋が見えます。
橋があったからなんとなく橋を歩いたけど、橋手前の岩場歩けました。(小屋から撮影)
薬師沢小屋。テラスがいい感じ。
薬師沢小屋は、目の前を流れる黒部清流の恩恵にあずかり、洗面所の水は使い放題、おいしい水は飲み放題。
一方で、雨の日は一瞬で水かさが増し、鉄砲水も流れる危険な場所へと変わります。
そのため周辺の地盤は弱く、小屋が傾き続けているそうです。
この日は薬師沢小屋のスタッフ「やまとけいこさん」が,本(黒部源流山小屋暮らし)を出版され、新聞社の方が取材に来ていました。
お土産にふりかけをたくさん持ってきていて、喜ばれるんだそうです。
本屋でこの本の存在は知っていたのですが、まさかこの小屋の人のことだったとは!
思いがけず泊まれてよかった!
「黒部源流山小屋暮らし」は、山小屋の裏情報が盛りだくさんで、イラストが多いので眺めているだけでも楽しい本ですよ。
3日目
今日は薬師岳に行くつもりでしたが、朝からひどい雨。
天気も悪いし、このまま折立に下山して帰りたいところですが、帰りの登山バスを明日予約したので、もう1泊しなければなりません。
この天気で薬師に行って、テント泊してもつまらなさそうなので、太郎平小屋に泊まっちゃうことにしました!
はぁ、2日も小屋泊するなんて…今回はなんて贅沢な山行なんでしょう。
薬師沢小屋から太郎平小屋までは2時間程。
早い時間に到着しても小屋の方に迷惑かなと思い、のんびり9時過ぎに出発しようかと思っていましたが(どっちの小屋にも迷惑ですね(;’∀’))雨量が多いと橋の上まで川の水位が上がり、通れなくなる時もあるとの情報を聞き、早々に出発。
途中、橋の上から見た川は、上流から激しく流れる濁流と「ゴォォォォーーー」と山に響く川の轟音がとても不気味に聞こえ、急に1人でいることが不安になりました。
これが橋の上まで来るときがあるなんて恐ろしすぎる。
足早に川を後にしました。
登山道は軽い小川状態で、靴の中はぐしょぐしょ。
太郎平小屋の木道周辺には、ニッコウキスゲが群生していました。
雨の中でも、お花畑を歩くのは気分がいいです。
太郎平小屋。
9時前に到着してしまい1番乗りで受付。まだ掃除中なのにすみません…
オーナーさんに乾燥室のストーブを点けていただき、誰もいないので濡れたテントも広げて乾燥&暖をとっていると、昨日出会った大学生パーティと再開。
折立まで下山したいが、雨がすごいので一旦雨宿りに寄ったそう。
昨日は雨の中、雲ノ平でテントを張ったが、一晩中テントに入ってくる水をかき出していたそうで、みんなずぶ濡れでお疲れの様子。大変だったね~
でも……
こういうのが後々いい思い出になるんですよね~
私は普段ソロが多いので、共通の山での思い出話が出来るのは、うらやましいなと思います。
午後になると宿泊者がぞくぞくと到着し、乾燥室はいっぱいに。
持ち物は全部乾かせたから、早く到着しててよかった。
小屋のごはん。
夕食後は食堂で、日本の山岳会に大きな影響を与えた「愛知大学山岳部の薬師岳遭難事故」のNHKドキュメンタリー・ドラマ「遭難」を観せて頂き、実際に捜索に加わった五十嶋オーナーが、当時の様子を話してくださいました。
「愛知大学山岳部の薬師岳遭難事故」とは…
昭和38年、記録的な豪雪の年末。愛知県山岳部13名が薬師岳を目指すも、下山途中で遭難してしまい、全員が亡くなってしまった遭難事故。
当時は山岳警備隊は発足されておらず、山小屋、ガイド、山岳会関係者などで捜索隊を結成し救助活動を行うが、救助を行う装備や機材が十分ではなく捜索は難航。
3月に薬師岳東南稜で7名、4月に4名の遺体を発見する。
その後も大規模な捜索を行うが、残り2名の遺体を発見できないまま、組織的な捜索活動は終了となり捜索本部は解散となる。
しかし、まだ遺体が発見されていない息子の父親が、山小屋関係者らと共に個人捜索を続け、これまで危険地域のため捜索対象除外地域となっていた黒部渓谷で、10月14日に残り2名の遺体を発見する。
降雪のため、今年の捜索を終了し下山すると決めていた前日のことでした。
この遭難事故がきっかけで、富山県警察山岳警備隊が発足され、遭難事故にヘリコプターが導入されるなど山の安全対策が大きく変わりました。
このドラマの撮影は、事故のあった翌年に始まったそうです。
最後まで諦めずに、息子を捜し続けたお父様目線の再現ドラマで、実際に捜索に関わった方々がご本人出演されています。若かりし日の太郎平小屋、五十嶋オーナーの姿も…
協力して下さったお父様は、ご子息を亡くされたばかり。精神的にも撮影ができる状態ではなくなってしまうことも多く、何度も撮影が中断されたそうです。
有峰口駅に下車し捜索に向かうシーンや「ご子息かもしれない」と連絡を受けたとき、急斜面のガレ場を懸命によじ登って確認に行くシーンは、お父様の演技ではないリアルな感情や想いが伝わってきて、胸が苦しくなりました。
現在は、当時の状況を話せる人は少なくなってしまったそうで、太郎平小屋に泊まった際はぜひ!五十嶋オーナーのお話とドラマを観てほしいです。
その為に泊まりに行ってもいいと思える程、価値のあるものだと思いました。
この記事、NHKの人読んでくれてないかなーー
BSとか、毎年山の日とか、年末にでも放送してくれないかなーー
4日目
太郎平小屋から折立までは地図では約3時間。なだらかな道が多く歩きやすかったので、休憩1時間を含め3時間程で下山できました。
オコジョにも出会えましたよ!
折立に到着ー
休憩所の折立ヒュッテ(茶色い小屋)は閉まっていて、小屋外の蛇口から水は出ませんでした。トイレと自販機はあります。
登山口を出て左に行くとすぐキャンプ場があるので、そこにも水場とトイレがあります。
予約していたバスで穂高まで下り、温泉に入って帰りました。
今回の山行は、始めの計画とは大分変わりましたが、黒部を堪能できたし、水晶小屋でまったりした時間は、思い返しても本当に気持ちの良い時間でした。
予定に全くなかった山小屋泊だったけど、テント泊とはまた違った楽しみ方を知れた、充実の4日間でした。