車でちょっと郊外に出かければ、中心部からそう遠くないエリアにも山林は点在しますし、県境をまたげば人口が少なくなるほどに山間部が広がります。
都市部で生活する人にとってはあまりなじみのない人の方が多いと思いますが、最近はソロキャンプなどレジャー目的で山の購入を検討する人もいます。
この回では山を買うとした場合の値段相場や、売買取引の注意点などについて解説していきますので、ぜひ参考になさってください。
山の値段には相場がない!?
不動産というのはそもそも相場を掴みにくい性質のあるもので、山の値段となるとさらにつかみにくくなるため、取引にあたって相場把握にかなり苦労されると思います。
市場価値という見かたにおいては、都市部の宅地であれば不動産業者に聞けば簡易査定ですぐに目安の価格を知ることはできるでしょう。
この相場観は、過去にあった類似の取引事例を参考にするものですから、取引が活発な一般不動産では通用します。
しかし山の取引は市場が形成されているわけでもなく、参考にできる事例が少ないため参考価格を出すこと自体が難しいのです。
結局、その取引ごとに様々な事情が加味されるため他の取引に参考にできるような事例の集積ができないという事情があります。
それでも、現在の状況を見る限りでは、どちらかというと買い手優位になりやすいということは言えるでしょう。
というのも、相続などで山を所有するに至ったものの、自分で林業などをやることもできず、ただ所有するだけでは固定資産税などの負担がかかるだけなので、お荷物になっているという人も多いのです。
そのため「買ってくれるだけでもありがたい」という人がいることも事実です。
購入希望者がまだ多くない現状においては、物件選択の幅も広く、売り主との交渉でも優位に立ちやすいということは言えると思います。
それでも相場が知りたいなら
山の値段はケースバイケースであるということを念頭に置いたうえで、それでも国内の山がどれくらいの値段で取引されるのか知りたいという場合、山林取引に明るい専門家の意見や現実にあった事例を参考にするしかありません。
山林の取引を仲介してくれる「山林バンク」というサイトがあり、その管理者である辰己昌樹氏という方がいます。
彼は日経ビジネスオンラインで取材に応じ、山林の価格はケースバイケースであるとしたうえで、「1ha(約3000坪)あたり30万円~80万円」という相場感を示しています。
上記はスギやヒノキなどが人工的に植樹されている山林に当てはまる数値で、人の手が入った山林の方が、人の手が入っていない自然の山林よりも高く評価されるようです。
確かに、自然放置された山林は荒れることが普通ですので、レジャーなどの目的にも合いづらくなりますし、木材調達のために購入するという場合も荒れた木材は価値が下がるのかもしれません。
植林されていない自然の山林の場合、「1haあたりで20万円~30万円」が相場になると述べています。
「山林バンク」を実際にのぞいて見ると、例えば山梨県笛吹市御坂町の山林が17,879坪で260万円、山梨県北杜市高根町の山林が8000坪で600万円、福島県南会津郡南会津町高杖の山林は1000坪で160万円、徳島県那賀郡那賀町木頭折字字折の山林が実測32万坪で1250万円で売りに出されています。(令和二年11/25現在)
山林の価格を左右する一般的な要因としては以下が挙げられます。
①管理のしやすさ
山林としての管理がしやすければ値段が上がり、管理がしにくければ下がります。
②木材調達のしやすさ
木材調達の視点で見た場合、切り出した木材を搬出する際の手間は非常に大きいものです。
木材運搬がしやすければ高くなり、しにくければ人気が落ちる分値段が下がります。
③規制や制限の多さ
山林は各種法令の適用を受け自由利用が制限されることがあります。
制限が多ければ値段は下がり、制限がなく自由利用が可能なものほど人気が出る分価格は上昇します。
一般的に、山林は面積に比して宅地よりもかなり値段は安くなりますから、数百万円程度で購入することができる物件も多くあります。
山林の売買仲介に特化したサービスはあまりないので、実際に取引を考える際には山林バンクが重宝することになるかもしれません。
上記の売り出し物件も含め、以下で確認することができるので参考になさってください。
山の売買は公簿面積で取引されることが多い
ところで、山林の取引では公簿取引となることが多く、実測が入らないことがあることを承知しておく必要があります。
公簿取引というのは、不動産登記簿など公的な書類を基に取引対象の不動産を売買するものです。
不動産は一応面積などが登記簿に記載されているので、これで問題がないこともありますが、一般的な宅地の取引の場合は測量を行って実測取引とすることが多いです。
何故かというと、公簿上の面積と実際の面積に食い違いがあることは珍しくなく、公簿に反映されていない部分の清算を行わないと不利益が生じる恐れがあるからです。
実測取引は土地の測量を行い正確な面積を割り出して取引されることから、取引後に問題が生じることはありません。
ただ、測量にはかなり高額な費用が掛かり、山林のような広い面積の土地を測量すると相当な負担となるため、当事者が合意の上で実測取引を避けることが多くなります。
上で見た山林バンクの物件の中にも、面積が「実測」であるものとそうでないものがありますね。
実測の場合は正確な面積が算出されているということですので、より納得性の高い取引が可能です。
山林売買の仲介および手数料について
一般的な宅地などの取引では、仲介に不動産業者が入ることが多いです。
土地取引では高額なお金が動くことから、取引の安全を担保するために仲介する不動産業者は免許を受けた者だけが商売することが許されており、それ以外の者が仲介に入ることはできません。
また仲介手数料についても法律で上限が定められており、これを超えた手数料報酬を要求することはできないことになっています。
これが山林の場合、仲介に入ることができる者に制限はなく、不動産業者以外の者でも問題ありません。
また手数料の上限についても特に規制がないので、下手をすると青天井で手数料が高くなってしまう恐れがあります。
そのため山林の売買で他者に仲介に入ってもらう場合、信用できるかどうかの見極めが重要になってきます。
そして手数料についてもしっかりと確認する必要があるので、後出しで高額の手数料を請求されることがないように注意して進める必要があります。
先ほどの宅地など一般不動産にかかる仲介手数料の上限を参考にした請求であれば良心的と考えることができるので、計算方法を確認しておきます。
手数料上限は取引の代金額を3つのステージに分け、それぞれのステージに相応するパーセンテージをかけます。
金額
| 対応するパーセンテージ
| |
① | 取引額200万円以下の部分
| 5% |
② | 取引額200万円を超え400万円以下の部分
| 4% |
③ | 取引額400万円を超える部分
| 3% |
例えば500万円の山林を購入したとすると、
①として200万円×5%=10万円
②として200万円×4%=8万円
③として100万円×3%=3万円
①+②+③=21万円+税が手数料ということになります。
手数料上限値に収まる請求であれば、ひとまず悪質性はないと考えて良いでしょう。
山の購入はよく考えて
昨今のソロキャンプブームなどで、芸能人の動画サイトで山の魅力が映った素材を見るチャンスが増えています。
「自分もこんな体験がしたい」と考える人が増えることも予想されますが、山も不動産であり、リスクやデメリットもあります。
魅力の面ばかりに目を取られてしまうと落とし穴にはまってしまう危険もあるので注意が必要です。
まず山も固定資産ですので、基本的には固定資産税というランニングコストがかかります。
また山林は法規制により自由利用が制限されることもあります。
建物を建てたり、水を引くなどの行為ができないこともあるので、よく調べたうえで自分が考えている利用の仕方が問題なくできるかどうか精査が必要です。
場合によっては土壌汚染などの可能性も考えた対応が必要ですので、山林の購入は時間をかけた調査が必要になります。
まとめ
この回では山の値段相場や売買取引の際の注意点などについて見てきました。
山の相場については一般の不動産以上に掴みづらい特性がありますが、どちらかというと買い手が優位に立ちやすい傾向があります。
宅地よりも価格は安くなり、数百万円程度で購入できる物件もあるので、余裕がある人はレジャーなどの目的で購入を検討しても良いかもしれませんね。
購入にあたり仲介をお願いするときは、法律の規制が及んでいないことに留意し、仲介者の信頼性や手数料の妥当性に気を配ることが大切です。
物件そのものについても、自身の利用目的を満たすことができるかどうか、念入りに精査することを忘れないでくださいね。