みなさんこんにちは!ライターのKajoです。今わたしは、富士山の北側・山梨県の河口湖より約15分、「すずらん群生地」に来ています。
標高約1300メートル、朝10時のゆっくりスタート。駐車場ではすでに、下山をキメた人々とすれ違いました。みんな、早い。
こんなにゆっくりなのはなぜか、ですよね。今日はなんと、初登山をする友人の勧誘に成功し、女子ふたりでの山行・目的は“おいしいランチを山頂で食べる”なので、お昼ごはんに合わせてタイムテーブルを組んだのです!わいわい!
早速入り口に近づいてみると、イノシシ除けの電圧線が。せっかくなので友人に外してもらいました。
ウキウキの友人には、事前にすべての持ち物を連絡・ちゃんと万全の格好で来てもらっています。買って眠っていた、登山靴がついに活躍する日が来たと喜んでいる様子。わたしも嬉しいよ〜ようやく一緒に登れるね。
ちなみに口説き文句は「富士山見ながら山の上でおにぎり、食べない?」です。
みなさんもぜひお友達の勧誘の際にお使いください。天気が微妙だけど、きっと見れるって信じてるよ、わたし。
「日本すずらん」が咲く時期は5月下旬から6月上旬にかけて。白樺の林のなか、芳醇なすずらんの香りを想像しながら、テクテク。この日はもちろんシーズンではないので、すずらんを見ることはできませんでしたが、あざみなどの野の花に蝶や蜂が集まる様子が見れました。
北口から南口に向けて、すずらん群生地を歩いて抜けて未塗装の林道を歩きます。木漏れ日がいい感じでした、数分ですずらん峠行きの登山口に到着です。
友人の思わぬ健脚ぶりに焦るわたし。
というのも、わたしはいつも一人で歩いてるので、だれかと歩くときの順番をどうしようか迷っていたのです。
(わたしの方が先に行ったほうがいいんだろうか)と思ったけど、友人、無邪気に前を行っているし難しいルートでもないので、後ろから「運動不足ってウソでしょ?!」などと声をかけながら様子をみることに。
『Kajoちゃん、山いっぱい行ってるよね、いいな〜』
と興味を持ち、いつもわたしの山のおみやげ話を楽しげに聞いてくれる友人と登れているなんて、本当に嬉しい。
ニヤついてしまう頰を、俯き加減で隠しながら追いかけます。
まだ駐車場から1時間とちょっとしか歩いていません。しかも緩やかな登り。
「あと15分ぐらいで林道出合に出るよ〜」
確かにずっと登りだったし、景色も開けているわけではないし、ちょっと飽きちゃったかな?とそわそわ。(今ならわかる、おそらく友人は疲れていた)
そしてすずらん駐車場から1時間と15分ほどで、林道につきあたります。
入り口付近では髪を下ろしていた友人が、かわいいヘアスタイルになっていたことに気づいたので声をかけると、割と序盤で結んでいたらしい。
全然気づかなかったごめん、でもかわいい。
林道を越えるといよいよ登山道に入るので、その前に一旦小休憩として飲みものを摂って息を整えます。
このあたりで一旦順番、変わろうね。わたしが前を歩くことに。
初めての登山には富士山周辺で初心者向けの山を探したのですが、大丈夫かな飽きてないかな、わたしはそれが一番心配でした。
『なんで息、切れてないの?!』
「切れないよ〜(笑)」
友よ、わたしたちは日頃の運動量が違う。
わたしは自分のザックから、山のお供であるコーヒーを詰めてきたボトルを取り出してゆっくりと味わいます。その間に息を整えてね、わたしも満喫してるから!
途中に道が極端に狭まる箇所に到達しました。前方に見えたのは、ロープを使用する箇所。
友人、ビビるかな?
数日前の雨でロープがまだ湿っており、足場も少し崩れていたので、わたしが先導をして
「ここの箇所、つま先で石を踏み込んでバランス取ってね。この枝は絶対につかんじゃダメ」
先に渡って、あとを追ってくる友人を見守ります。ドキドキすぎて写真撮れなかった〜〜〜!
ロープの箇所を越えると、あとは穏やかな登山道に戻ります。
「手、汚れちゃったね」
わたしが汚れた手をTシャツで拭う姿を見て友人、爆笑。
ケタケタと笑いながら、難関を越えたわたしたちはつづら折りの登山道を行きます。
「あと少しだよ!」
という、のちのち“あと少し詐欺”とネタにされるわたしの声かけを繰り返し、やがて尾根が見えてくる場所までひたすらテクテク。
このあたりで山頂からくだってくる人とすれ違い「頂上付近は濃霧で富士山なんてひとつも見えないよ」との声かけが。わたしも普段、山ですれ違う人の装備が不安だったら、気を付けてねの意味で声かけをしますが、今まで登ってきた中で一番ショックな声かけでした。
申し訳ありませんが、あなたがすれ違った女性ふたり、ひとりは今日がデビュー戦なんです。
口には出さずともその肩が落ちている友人に、わたしたちの目的は山でお昼ごはんを食べることであり、それは今わたしのザックの中に入っていることを伝え、気を取り直して山頂を目指すことに。あなたが悲しいと、わたしも悲しい。
すずらん峠を左へ。目指すは黒岳頂上!と意気込み、途中は確かに濃霧で霧雨もあったのですが、10分も登ると風が強まり頭上の雲がすごいスピードで晴れていくのがわかりました。
そして、見えた。
『富士山だ〜〜〜〜!』
はしゃぐ友人、そしてわたし。
木々の間から開けた景色のその先に眺める、霊峰富士。よくここまで頑張ったね……
「あと少しだよ!」
『それさっきも聞いたよ!』
山頂手前に着くころ、おそらく疲れも溜まっているはずの友人。小さな声で『あとちょっと』と自分を励ましているのが聞こえます。
最後のちょっとした急登を越えると、「山梨百名山・黒岳」に到着です。山頂標識を写真に収める友人。
「景色は開けてないけど、わたしたち着いたよ!」
『記念すべきひとつめの山だね、目指せ残りの99!』
待って、山梨百名山制覇するつもり!?山頂での無邪気な彼女に、クスリ。
「富士山・河口湖が一望できる場所あり、だって。行こう?」
200m先を示す看板、ねえねえこれも下調べ済みです。お昼ごはんはやっぱり、景色のいい場所でとりたいよね。
途中で心が折れそうなこともあったけど、友人とわたし、二人で初めて見た山の景色です。
『Kajoちゃんの話をいつも聞くばかりだったけど、楽しそうだなって毎回思ってた。連れてきてくれてありがとう』
弱音を一度も吐かずに、しんどいときは自分を励ましながら歩けるような友人。
登山口から2時間30分、念願の場所に着きました。
おにぎりは2種類ずつ握ってきたけど、前日楽しみすぎて眠れずに圧倒的寝坊をかましたんです。
それでも、『おいしい、おいしい』と頬張ってくれる友人。次はあなたのためにワインボトルでもフランスパンでも、なんでも担ぐと誓った。
1時間ほど時間をかけてゆっくりと景色を堪能した後に帰路へ。このくだりが膝にくる!登りよりもくだり核心でした。登山口到着時には膝が笑っていた友人に「温泉、入っていかない?」と提案。ふたりで温泉に寄りアイスクリームを食べ、朝の集合から夜の解散までずっと笑っていた1日を過ごしました。
わたしにとってはリハビリ登山、友人にとっては記念すべき登山デビューの山。
『次はどの山にする?』
帰りの車中のその言葉が、一番うれしかったな。次回はもう少し距離歩いてみようか、登ってみたい山はある?“女子ふたり登山”、やってみたい方への参考になりますように。ではみなさん、また次回!
取材・写真:Kajo