登山YouTuberイタガキ▲さんに聞く!映像制作のこだわりや登山動画の撮影Tips

登山動画やガジェット動画をYouTubeに投稿されているイタガキ▲さん。今回は長年、山で動画を撮り続けているイタガキさんに、登山動画をはじめるときの機材、撮影のコツについて色々と教えていただきました。

–はじめまして。マウンテンシティ編集部です。いつもイタガキさんの動画、拝見しております!ファンです(笑)簡単に自己紹介をお願いできますか。

 

 

はじめまして!YouTubeチャンネル「ITAGAKI.TV」で主に登山の動画を投稿しておりますイタガキ▲です。

1979年生まれで神奈川県の出身、青春時代はテレビゲームと熱帯魚飼育に明け暮れる日々でしたが30歳を過ぎて一転、アウトドア人間になりました。

普段はフリーの映像編集マンとして仕事をしています。仕事ではYouTubeでやっているような動画編集ではなく、もう少し専門性の高い職人仕事のようなことをやっているんです。

 

–ありがとうございます。もともと映像のお仕事をご専門にされていたのですね。YouTubeでの動画投稿はいつ頃はじめられたのでしょうか?

 

2013年ごろですね。ちょうどその頃からYouTuberという存在がメジャーになってきて、自分もその波に乗ろうと思いまして(笑)

YouTubeをはじめた当初のお写真

–そうだったんですね!ではイタガキさんの映像制作はその頃から?

 

いえ、実は動画投稿を始めたのはYouTubeがはじめてではないんです。それより以前はニコニコ動画から。当時は水草水槽のアクアリウム動画をアップしていたんですよ。

それがもう10年以上も前の話…(笑)その当時、ニコニコ動画よりYouTubeのほうが高画質に動画投稿できたこともあって、YouTubeに乗り換えました。

 

–10年も前から映像制作をされていたなんて…驚きです。当時はアクアリウム動画をアップされていたということですが、登山にハマっていったのはどういう経緯だったんですか?

 

記憶が定かではないのですが、当時付き合いのあったアクアリウムショップの店長と「登山とか面白そうだよね〜」と話していたのがきっかけでした。

それでトントン拍子に進んで、いきなり北アルプスの燕岳に登ってしまって。そこで見た景色が素晴らしすぎて、登山にハマっていきましたね。

登山にハマってしまったきっかけ、燕岳

あと私は運転免許をとるのが30歳になってからと遅かったんですが、はじめて自分で買った20万円の中古軽自動車を手にして、

「これさえあればどこまででも行けるじゃないか!」

と思って、急にインドアからアウトドア人間になったのもきっかけの一つです。

 

–燕岳ですか…!はじめてにぴったりの山!また車を手に入れたこともひとつの引き金になっていたんですね。車があればどこへでもいける感(笑)…わかります。

 

–イタガキさんと言えば登山動画はもちろん、ガジェット動画もたくさん投稿されていますよね。ガジェットレビューをはじめたきっかけについても、ぜひ教えてください。

 

他のYouTuberさんがやってたから、というのが偽りない真実ではあります。

ですが、もともと子供の頃からビデオカメラやパソコンが大好きだったので、登山と同じくらい楽しんでいますね。

ガジェットのレビューってどうしても同じような動画になってしまいがちなんですが、そこで他の人とどういう違いをつけようかな、と考えながら作るのが面白いです。

もちろん、登山動画の撮影に活躍する機材を紹介する目的で、ガジェットレビューを行っている側面もありますよ。

卵型ドローン、PowerEgg Xをレビューするイタガキさん

–他のレビュー動画とうまく差別化して、オリジナリティを出しているということですね…!その他、イタガキさんが映像制作でこだわっているポイントはありますか?

 

とくに登山動画で大事にしているのは、やっぱり” 臨場感 ”でしょうか。「実際に山に登ったような気分になった」という感想をいただくと嬉しいです。

その臨場感を出すために一番こだわっているのが「音」。

YouTubeってスマホで見る人が大部分で、音の違いってあんまり伝わりづらいんですけど、ここはもう自己満足的にこだわっているところで。

例えば、ガレ場を歩くときの岩の動く音、樹林帯の鳥の声は編集で少し大きくしています。それと自分の動画は「話す」動画が多いので、自分の話し声もなるべく聞き取りやすいような録音を心がけていますね。

 

–なるほど。確かに登山中の自然音って動画を観ている方にとって伝わりにくい部分ですものね。

***

最近は動画配信のプラットフォームが整ってきたこともあり、山で動画を撮りたいと考えている方もいらっしゃるのでは?イタガキさんに登山動画を始めるときの機材や撮影のコツについても聞いてみました。

 

–山で動画をはじめたいなと思っているのですが、機材選びが悩ましい…と思っておりまして。ガジェットまわりに知見のある、イタガキさんおすすめ機材を教えていただきたいです。

 

最初の一台ということだったら、いわゆる「アクションカム」がおすすめです。

小型軽量で防水、衝撃にも強いので、とにかく気軽に山に持ち出せるのが魅力です。価格もミラーレス一眼などに比べたらお手頃ですし、何より景色を広く撮影できる「広角レンズ」が備わっているので、意識してカメラを向けなくても、それなりにいい感じに撮れますね。

最新のものは強力な手ぶれ補正も備わっているので、手ぶれも気になりません。また、コマ送り動画のようなタイムラプスも撮影できたり。あと小型なので、他の登山者からもそれほど意識されない、というメリットもあったりします。

イタガキさんが使ってきた歴代のアクションカムの数々

GoPro HERO8 Black
4k 60 ハイパースムーズ2.0
タイムワープ2.0
10m防水・耐衝撃
折り畳み式フィンガー
いらないアウトドア用品を売るならマウンテンシティ!
DJI OSMO Action
デュアルスクリーン搭載のアクションカメラ
4K HDR動画、4K/60fps
8倍スローモーションなどの高機能
水深11メートルまでの防水性能
いらないアウトドア用品を売るならマウンテンシティ!

–GoProなどのアクションカムは、登山動画を始めるに当たってはいいことづくしなカメラですね。逆に初心者が気をつけるべき点はありますか?

 

アクションカムのデメリットは、近づきすぎるとピントがボケてしまうこと。

例えば高山植物を見つけたとき。近寄って撮りたい、というときには不向きです。アクションカムはピントが遠くのものを写すために設定されているので、近すぎるものはボケてしまいます。

そして優れた防水のせいか、やっぱり音は良くないです。聞く人によっては全然問題ない場合もありますが、私個人としては優・良・可のうちの「可」という印象…。

他にもコンパクトデジカメ、ミラーレス一眼、ジンバル付きカメラ、一般的なビデオカメラなど、さまざまな選択肢があります。ですが、それらを持っていても「アクションカムでしか撮れない場面」というのは絶対にあるので、最初の一台ということでおすすめします。

 

–簡単に撮影できる、という意味でスマホはどうでしょうか?最近のスマホは機能的に優れていますよね。

 

お手軽な機材として皆さんお持ちの「スマホ」がありますが、こちらはあまりおすすめしません。

スマホでの動画撮影はバッテリーを著しく消費するので、いざというときに電話としての機能が使えないと困ります。写真撮影を含めてスマホの電力は極力温存しておきたいところです。

 

–スマホはNGですか。バッテリーを消耗してしまうと、GPSが使えなくなってしまうケースもありますね…アクションカムの撮影において、あると便利な小道具はありますか?

 

自分の話し声をしっかり鮮明に撮りたいときは、ピンマイクを使っています。いわゆるテレビで芸能人が付けているようなものですね。

テレビでは、胸元のマイクに綿毛のようなものが付いていますが、あれは風に吹かれても「ボフッ」というような音が入らないように付いているんです。これは山の稜線上でも有効で、「うわー綺麗!景色最高!」といった声が風切り音でかき消されてしまう…なんてことを防いでくれます。

テレビでは音声さんがいて、そのピンマイクの音を電波で飛ばしていますが、ひとりでそのセットを組むと、高価な機材が必要だし管理も大変です。

なので、私は小型のレコーダーをつないで音声を収録するようにしています。その音をあとで編集するときに、カメラの映像とタイミングを合わせて使っていますね。

ピンマイクレコーダー、TASCAMのDR-10L

 

他にはアクションカムを持ちやすくする自撮り棒や、小型で丈夫な三脚など登山のスタイルに合わせて携行するようにしています。

(上)ミニ三脚、LeofotoのMT-03+LH-25 、(下)自撮り棒、PGYTECHのエクステンションポール

Leofoto MT-03+LH-25 ミニ三脚
収納高 212mm
全伸長 249mm
最低高 99mm
耐荷重量 5kg
重量 340g
いらないアウトドア用品を売るならマウンテンシティ!
PGYTECH エクステンションポール
各種アクションカム対応の「三脚」「カメラグリップ」「セルフィースティック」と3WAY簡単変形が可能な三脚
軽量かつ伸縮可能なコンパクト設計で持ち運びに便利
滑りにくい表面加工
ゴープロマウント採用
いらないアウトドア用品を売るならマウンテンシティ!

–別収録で音を聞きやすくしているのですね。知りませんでした…!最初に揃える機材は分かったのですが、問題は実際の撮影…。動画初心者へ、ちょっとしたコツを教えていただきたいです。

 

そうですね。一番大事なのは「同じような映像ばかりを撮らない」ということ。

映像撮影の初歩のような話になりますが、私は「編集するときにどう使われるか(編集しやすい映像かどうか)」を頭の片隅において、撮るようにしています。

景色を撮るときはもちろん、人物を撮るときも正面からばかりでなく、ちょっとカメラを引いて撮ったり、逆にズームを使って表情を撮ってみたり。

そういう風に映像のバリエーションが多いと、あとで素材を並べたときにあまり悩まずに編集ができますよ。

極端な話、登山口から編集のことを考えながら、バリエーション豊かな映像を時系列に撮っていけば、あとはそれを並べるだけで登山映像ができてしまうわけですね(笑) 

「ここは高くて怖いよー」とか「稜線を一人占めだよー」ということを、映像で伝えたいとは思うんですが、自撮りのひとり撮影だとなかなか難しいです。そのへんは自分でも毎回試行錯誤しながら撮っていますね。

 

–映像をみている方にとって飽きのこない映像を撮る、ということでしょうか?確かに同じアングルからの映像だと、単調な動画になってしまう恐れがありますね…。ためになる撮影ノウハウを教えていただき、ありがとうございます。

***

今後も登山動画を撮り続けていくつもりだ、というイタガキさん。最後にイタガキさんの今後について聞いてみました。

 

–今後イタガキさんが挑戦したいことってどんなことでしょうか。

 

具体的な山でいうと北アルプスの剱岳に登りたいです。山容もカッコいいですし、「岩の殿堂」といわれる山なので、岩好きとしては憧れの山ですね。

あと「登山動画」ということでいうと、まだ自分の「これだ!」というスタイルが確立していないのでそれを追い求めること。これは挑戦というか、たぶんずっとやり続けていくことだと思います。

他にもソロばかりではなくグループ登山をもっと増やすとか、登山レースのようなものにも挑戦してみたいですね。

 

–剱岳いいですね。私も登ったことはありませんが、立山三山の縦走路で剱岳をみたときは圧倒的な存在感を感じたことをよく覚えています。

 

–イタガキさんが登山動画で伝えていきたいことってどんなことでしょう?動画を続けていくモチベーションの源泉ってどこにあるのかな、と思いまして。

 

伝えたいことは……「登山って最高だぜ!」これだけなんですが(笑)

オフ会やSNS、または実際の登山中に「イタガキさんの動画を見て登山を始めました」と言ってもらえるのが、モチベーションになっています。

日本の登山人口をもっと増やしたい、なんてことは考えていないです。だけど、共感して登山を始める人がいて、さらに登山動画を始める人も出てきて…という流れそのものが楽しいので続けられているのかもしれません。

ステイホームで大変な時期でも、生放送を通して登山に行けない思いを共有できたので、自分が視聴者の方に助けられたというのもあります。

塔ノ岳での一枚

–イタガキさんを中心に登山仲間の輪が広がっていく。そんなところがご自身のモチベーションの源泉になっている一面もあるんですね。まわりに登山仲間がいなくて困っている方もいるので、登山好きが集まるコミュニティって素敵だなと思います。本日はありがとうございました!

***

自身の動画スタイルを確立するため、今後も山で動画を回し続けていく、というイタガキさん。今回はそんなイタガキさんに動画初心者向けの機材、撮影のコツについていろいろと聞いてみました。イタガキさんの登山動画を参考に、あなたも映像制作をはじめてみてはいかがでしょう?

 

イタガキさんのYouTube動画はこちら

北アルプス・燕岳に登る Episode.1 ―真夜中のドライヴ―

 

八ヶ岳ソロ登山|2019.8.27 権現岳(2715m)日帰り

 

私的登山映像|2019 涸沢穂高行|紅葉の北アルプス

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