福岡県民憩いの場として有名な『大野山』。家族連れまたは学校遠足の行楽先として、地元では子どもからお年寄りまでおなじみの山です。そんな県民から親しまれる『大野山』の歴史からおすすめコースなど魅力に迫ります。
四王寺山と親しまれる県民の憩いの山
大野山(おおのやま)は、福岡県の太宰府市、大野城市、糟屋郡宇美町にまたがる標高410メートルのなだらかな台形の山です。平地から見て台形に見えるのは、山頂部分がすり鉢のような形をしているためで、この独特の形が人々に親近感を与え、古くから地元の人たちに大変愛されてきました。大野山を中心に、岩屋山・水瓶山・大原山の4つの山から構成され、四王寺山脈と呼ばれることもあります。
山頂からは玄界灘や筑紫平野が一望でき、史跡「焼米ヶ原」や「岩屋城跡」も近く、尾根伝いに残る全長約8キロの「大野城跡」の城壁跡づたいに歩く「土塁巡り」や、4つの山の縦走など、目的地となるポイントの組み合わせによって、自由自在に登山距離の調整ができる、登山初心者には理想的な山です。
また山頂中心部にある「福岡県県民の森」は自然林や人工林342ヘクタールの森を管理するほか、「福岡県県民の森センター」や森林について学べる「展示館」、子ども用遊具のある「こどもの国広場」などがあり、家族連れや学校遠足で訪れる際の休憩所も兼ねています。
桜や新緑の季節をはじめ。四季折々の植物や、キビタキやアカウソなどの野鳥が観察でき、特に紅葉の時期にはカエデ、モミジ、ヌルデ、イチョウ、コナラなどが美しく色づきます。
特別史跡「大野城跡」
地元では圧倒的に四王寺山(しおうじやま)やと呼ばれて親しまれている大野山ですが、またの名を大城山(おおきやま)とも言います。これは古代史に残る「白村江の戦い」で、唐と新羅の連合軍に大敗した大和朝廷が、敵国からの報復を恐れ、翌年665(天智天皇4)年に「大宰府政庁」の護りとして、その北側に百済式山城を築いたことに由来します。大野山にある大野城跡はこの太宰府一帯にある「大宰府政庁(都府楼)跡」「水城跡」「基肄城跡」と並ぶ、国の特別史跡です。
特別史跡「大野城跡」は福岡県文化財保護課が発掘調査を行っており、山頂部にある土塁や「百間石垣」に代表される石垣群、9ヶ所の城門跡や倉庫群のあった「焼米ヶ原」、など、山のいたるところで当時の様子を垣間見ることができます。日本史の教科書で習った、全国からの防人が配置された軍事施設の一箇所であり、峰伝いに博多湾からの烽(とぶひ)が置かれていたことでも知られる、古代の歴史ロマンあふれる山です。
その風情ある姿は『万葉集』にも詠まれています。
「大野山 霧立ち渡る わが嘆く 息嘯(おきそ)の風に 霧立ち渡る」(巻五 七九九)山上憶良
「いちしろく しぐれの雨は 降らなくに 大城山は いろづきにけり」(巻十 二一九七)
また四王寺(しおうじ)山と呼ばれるようになったのは、774(宝亀5)年、「四天王」を奉納して外的撃退を祈願した四王寺に由来します。
中世になると「岩屋城」が築かれ、1586(天正14)年には島津氏と大友氏が攻防戦を繰り広げた「岩屋城の戦い」で、大友氏の守将、高橋紹運が討死。二の丸のあった場所には石碑が建てられ、ひっそりと当時を偲ぶことができます。
はじめての大野山(四王寺山)登山おすすめコース
引用:http://jac.or.jp/oyako/f10/c5020.html
はじめて大野山(四王寺山)に登る場合は、初回は西日本鉄道太宰府駅、または太宰府天満宮大駐車場を起点として、「太宰府」交差点から「連歌屋」方面へ進み、「ルートイングランティア」経由で車道沿いを山頂入口まで上り、「岩屋城跡碑」を訪ねながら同じ道を下山するか、もしくは「焼米ヶ原」から「水瓶山(212メートル)」ルートへ下山して、「三条」または「連歌屋」方面へ降りるコースがおすすめです。
大野山(四王寺山)登山への装備
大野城山(四王寺山)はよく整備され、初心者にも比較的歩きやすい山ですが、一歩山林に迷い込むと、遭難の恐れもあります。以下、登山への装備で必要と思われるものを挙げておきます。
- ・登山靴またはトレッキングシューズ
・レインウェア
・防寒着(フリース、セーター、ダウンジャケット、防寒帽子、手袋、ネックウォーマー、サバイバルシートなど)
・肌着(速乾性のある化繊の肌着)
・日除け帽
・飲料水(ミネラルウォーター)1~2リットル
・行動食(チョコレート、ナッツ、スポーツフード、キャンディー、マヨネーズ、塩昆布など)
・ゴミ袋(ゴミは必ず全部自分で持ち帰ること)
・小銭と厳禁(トイレへのチップ用など)
・距離やコースタイムが記載されている地図
・必要であればストック
・タオル
・季節により魔法瓶、カイロ
・足首保護用スパッツ
・ハンカチとティッシュペーパー
いかがでしょうか。福岡市からも近いので、時には街の雑踏を離れて、悠久の時に身を任せながら、大らかな登山のひとときを楽しんでください。休日は家族連れでゆったり登山はいかがでしょうか?