引用:pixabay.com
山での服装の選択は命に関わる問題になりかねません。山の遭難事故の原因の多くは防寒着を持っていなかったため低体温症で動けなくなったことが多く、準備不足であり、根本的には知識不足と言わざるを得ません。山では最悪の状況を考えて入るべきで、服装選びは基本です。今から登山を始める方は、ぜひ、山の気温に関して知識を付けて、最適な服装選びができるようになってください。
平地と山岳での気温の違いを知っておく
一般的に気温は100メートル毎に0.6℃下がります。また、秒速1メートルの風が吹く毎に1℃下がる事が知られています。従って、標高1000メートルの山頂で秒速5メートルの風が吹いていた場合、平地が20℃の時は、
20℃ ― ((1000m / 100m) × 0.6℃) ― (1℃ × 5m/s) = 9℃
つまり山頂では9℃となり、平地とは相当違うことがわかると思います。
同じ条件で、それぞれの季節の東京の日平均気温で計算した場合、標高1000メートルの山頂を例にとると、
1月 平地6.1℃ …山頂マイナス4.9℃
4月 平地15.4℃ … 山頂4.4℃
7月 平地25.4℃ … 山頂14.4℃
10月 平地 18.7℃ … 山頂 7.7℃
となりますので、平地の春秋は山では冬、平地の夏は山では春秋の気温と同等であることがわかります。
また、日差しという要素も見逃せません。日差しに関しては、体感温度換算が難しいのですが5℃ぐらい上がると考えていいようです。5℃の差は服装1~2枚分です。
これを踏まえて服装選びを考えていきます。
(平均気温 … 気象庁ホームページ 2016年の東京日平均気温より)
季節に応じた登山の服装の選び方 春夏秋の場合
10月 平地 18.7℃ … 標高1000メートル山頂 7.7℃
夏登山は春秋の服装、春秋登山は冬の服装も用意をして登るべきという事になりますが、日差しはまだ強いので晴れていると上着がいらなくなるようにもなります。この気温差を考慮した場合、冬とそれ以外では、服装の用意の仕方が変わります。
・今の季節よりも一つ寒い季節を想定し防寒着になる服装を携帯する。
・天気により暑くもなり寒くもなるので、厚手の一枚よりも中厚手の2枚を用意する。
この2点を考慮しておきましょう。例えば、厚手のウールのシャツ1枚よりも、化繊のシャツ2枚のほうが応用が利きます。また、ウィンドブレーカーなどの風をシャットできるシェルは必ず携行しましょう。モンベルのトレントフライヤー ジャケットはレインウェアですが、非常に軽量で薄くしなかやかなのでスリーシーズンはこれ一枚で済みますのでおすすめします。
■素材構成: ゴアテックス®パックライトファブリクス[表:12デニール・バリスティック®エアライトナイロン・リップストップ
なお、3000メートル級の山岳の場合は、夏であろうとダウンジャケットやフリースなどを必ず携行するようにしましょう。
季節に応じた登山の服装の選び方 冬の場合
1月 平地6.1℃ … 標高1000メートル山頂マイナス4.9℃
携帯型のダウンジャケットなどの中綿の防寒着は、低山であろうと必ず携帯します。また、着用しているミドルウェア(フリースなど)とは別に、もう一枚、予備のミドルウェアを用意します。行動時に想定より寒くなった場合は、フリースベストなどの予備のミドルウェアで対応します。つまり、冬の服装をもう一枚用意しましょう。パンツは厚手のロングを選びますが、その下にもウールか化繊のタイツを履きます。しかし、冬と言えども、晴天で風が無いとそれなりに暑くなってきますので、春秋などと同じように、厚手の1枚より中厚手2枚のほうが脱ぎ着しやすく行動しやすくなります。冬にお勧めなのがネックゲイターです。ネックゲイターひとつでトップス1枚分くらい暖かく、しかも、取り外しが楽なので登山にお勧めです。このノースフェイスマイクロ ストレッチ ネック ゲイターは薄手ですが光電子機能により自然な暖かさが持続します。
気温で覚えておくと服選びが楽になります
気温と手持の服装との関係を決めておけば、あとは目的地の天気予報と山の標高を見るだけで、登山当日に着ていく服装と携行する予備の服装は決まりますので、考えるのが楽になります。ただし、山の天候は急変することもあり、予想と違う事も多々ありますので、どんな状況下にも対応できるように、季節に応じた予備の服装を用意しておきましょう。