見る者の心を動かす、山がテーマの写真集5選

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2016.11.19

日本の富士山をはじめ、世界にはさまざまな「絶景」を持つ山が存在します。しかし、プロの登山家でもない限り、それらの山をすべて登るなんて現実的に不可能ですよね。それならば、せめて写真でよいから見てみたいと思うのがハイカーというもの。もっとも、美しいだけが良い写真というわけではありません。今回は、美しいだけじゃない、見る者の心を動かすような日本の山岳写真集をピックアップしました。

日本中の山を網羅「名峰・日本縦断」白籏史朗

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「名峰・日本縦断」は、そのタイトル通り、日本中の山を山岳写真界の巨匠・白籏史朗が8000日かけて撮影した大判の写真集です。北は北海道から南は鹿児島まで、全197点にも及ぶボリューム満点の写真と、撮影データが収められています。
「人工の色や奇を衒ったひとりよがりの写真は、それを創った神への冒涜である」と自身のHPで語る白籏の写真は、我々を圧倒しつつも、どこか日本人にとっての「原風景」を思わせる懐かしさを感じさせてくれます。

執念すら感じる「富士日記」山下茂樹

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山下茂樹は、富士山の写真集だけでも6冊出している生粋の富士山好きです。自身では風景写真家を名乗っていますが、山下の撮る富士山の写真からは、ある種執念のようなものが感じられるほど、あらゆる角度・視点から富士山を撮り尽くしています。「富士山の写真なんてありふれてる」と思いがちですが、山下の「富士日記」では、今まで見たことがない富士山の姿が見られるでしょう。
A4判オールカラーの写真からは、一つの山でこれほど違った様相を魅せる富士山という山の神秘性を感じずにはいられません。キャンピングカーで自炊しながら日々変化する富士山を撮り続けた山下だからこそ発見できる「新しい富士山」を、ぜひあなたも見てみませんか?

「絶景山」ピーピーエス通信社ほか

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「絶景山」は、日本だけでなく世界中の名山の驚くべき絶景を収めた写真集です。写真を楽しむのはもちろん、写真に添えられた標高などの説明や地図、山の麓の写真とともに、世界の広さと奥深さも知ることができます。
世界最高峰であるエベレストはもちろん、スイス・イタリア間のマッターホルンや、中国にある人類未踏峰の山・梅里雪山など、幅広く網羅しているのも嬉しいポイント。日本の山としては富士山が収録されています。価格も比較的リーズナブルなので、世界的に有名な山を一度に楽しみたいという入門編としてもおすすめの写真集です。

山ガールでは終わらない「山と写真」野川かさね

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少し気色の違った写真家をご紹介しましょう。特に女性におすすめなのが、野川かさねの写真集です。いわゆる「山岳写真家」という言葉から想像するタフでヘビーデューティーなイメージを覆している野川は、山岳写真を撮り始めるまでほとんど登山の経験がなかったという異端児。しかし、そんな彼女だからこそ撮れる山の写真があると最近話題急上昇中なのです。
自身初の著書である「山と写真」では、写真がそれぞれ「光」「空気」「偏愛」など6つのテーマに分けられています。一見温かく可愛らしさまで感じる写真があるかと思えば、はっとするほど鋭く、突き放したような冷徹さが窺える写真もあり、見ていて飽きません。本書には高尾山撮り下ろしミニフォトブックがついているほか、高尾山のコースマップやおすすめ撮影スポットなど、読み物としても面白い作品に仕上がっています。

モノクロ「第二界 山よお前は美しすぎる」川口邦雄

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ベテラン山岳写真家である川口邦雄のモノクロ写真集「山よお前は美しすぎる」は、カラーの写真集が多い山岳写真の中でひときわ目を引く存在です。山は美しいだけでなく、時として命を奪う恐ろしさを秘めているにもかかわらず、なぜ人は山に登ってしまうのか?その答えが、本書のタイトル「美しすぎる」という言葉に集約されていると言えるでしょう。
カラーではなくあえてモノクロにすることで、山の美しさと恐ろしさの両面が絶妙に表現されている稀有な写真集です。タイトルに「第二界」とつくのは、40年以上前に出した写真集とあえて同じ名前にしているからです。印刷技術をアップデートして収録作品も変更した本作は、モノクロだからこそ分かる光と影のコントラストがより鮮明に映し出されています。

山岳写真にしかない魅力を楽しんで

スマホの普及で誰もが気軽に写真を撮れるようになった時代、写真はぐっと我々に身近なものとなりました。その分、わざわざ写真集を買ったり写真展に行ったり、という特別感はなくなったのではないでしょうか。
しかしそんな中で、山岳写真だけは別です。山岳写真の面白さは、山の性質や地形上、アマチュアでは決して撮れないプロならではの写真というものが歴然と存在するところにあるでしょう。装備や機材を準備し、登山のための訓練を積んだ山岳写真家でなければ、圧倒的な山の写真は撮れないものです。美しいだけでなく、驚きや恐ろしさまで感じられる山岳写真集は、読むだけで非日常を味あわせてくれます。
もっとも、野川かさねのようにより身近な山岳写真も人気が出てきています。これは山を愛する人たちが、より幅広く、層も厚くなってきた証拠ではないでしょうか。どんな写真集にしろ、写真家の山への愛情が伝染し、山に登りたくなること間違いなしです。

※記事の掲載内容は執筆当時のものです。